2011 Fiscal Year Annual Research Report
ストリゴラクトン信号伝達系の解析及び菌根菌共生とのクロストークの解明
Project/Area Number |
11J08230
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 明希子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | イネ / 発生形態 / 分げつ |
Research Abstract |
ストリゴラクトン(SL)は、分枝を抑制する植物ホルモンとして知られている。イネにおいて、SLの生合成や受容に関与する遺伝子の欠損変異体は、現在5つ報告されており、それぞれの原因遺伝子が明らかにされている。しかし、SLの受容・信号伝達のメカニズムには依然として不明な点が多く、それを明らかにするためには関与している他の因子の単離と同定が必要である。SLは、植物の共生菌であるアーバスキュラー菌根(Arbascular mycorrhizal AM)菌の菌糸誘導促進シグナルとして機能することも明らかにされている。本研究では、SLの分子抑制メカニズムを解明することにより、それにより得られた知見とAM菌共生との関連を明らかにすることを目的として行った。イネD53は優性の分枝過剰変異体である。D53は、SLに非感受性であり、なおかつフィードバック制御により内在性のSL合成が増加していた。このことから、D53が、SLの信号伝達に関与している因子の一つである可能性が考えられる。そこで、ポジショナルクローニングによりD53遺伝子の単離を試みた。次に、SL受容・伝達機構に関与する新規の因子を探索するために、分枝過剰変異体の表現型を抑制するサプレッサーのスクリーニングを行った。その結果、M2個体で、分枝過剰の表現型が抑制されたサプレッサー候補ラインを選抜し、複数の候補が得られた。今後、得られたいくつかのサプレッサーの原因遺伝子を単離し、機能を解析していく予定である。また、植物の分枝は、栄養成長と生殖成長の両方に見られる。SLが栄養成長の分枝を抑制することは知られているが、生殖成長の分枝に関しては未解明である。そこで、生殖成長の分枝過剰変異体を用いた解析も合わせて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イネの栽培は、屋外では1年間に1回だけしかできないので、大規模な変異体のスクリーニングから、遺伝子の単離までに時間がかかる中、1年目で候補変異体をいくつか単離することができた。ただ、分枝過剰変異体D53の原因遺伝子の単離に関しては、マッピングで狭めたゲノム上の遺伝子候補領域に関して、ゲノム内の他の領域と重複しており、遺伝子の単離が困難であることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
植物個体の中で、栄養成長の分枝と生殖成長の分枝とは、トレードオフの関係にあり、それらの分枝数は反比例する傾向があることが知られている。このことに、SLがどのように関与しているのかについて解析を行う。また、イネにおいて、SLの生合成や受容に関与する遺伝子の欠損変異体とAM菌感染共生との関連を明らかにする予定である。
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