2011 Fiscal Year Annual Research Report
回顧的再評価に関する実験心理学的研究 : ヒトはなぜ容易に判断を覆すのか?
Project/Area Number |
11J08255
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
沼田 恵太郎 関西学院大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 回顧的再評価 / 逆行ブロッキング / ヒト / 随伴性判断 / 皮膚電気条件づけ / 連合学習 / 命題推論 / 因果帰納 |
Research Abstract |
複合条件づけを行った後に、一方の要素刺激のみを強化すると、他方の要素刺激に対する条件反応は減弱する。この現象は逆行ブロッキングと呼ばれ、ヒトや動物が回顧的に推論を行ったことの証拠とみなされる。しかしながら、その詳細な発生機序は明らかになっておらず、現在もなお多くの学習理論の試金石となっている。本研究の目的は、随伴性判断と皮膚電気条件づけの実験事態を用いて、ヒトの回顧的再評価の生起条件を検討することである。 当該年度では、まず、随伴性判断の事態で教示の効果を検証した。課題で観察する先行事象と後続事象のどちらが原因候補であるかを群間で操作し、実験を行った。その結果、"先行事象が原因候補である"と教示された群では回顧的再評価が生じたものの、"後続事象が原因候補である"と教示された群では回顧的再評価は生じなかった。この知見は、因果に関する命題的知識の獲得が、回顧的再評価を調整したことを示唆している。また別の実験では、主観報告と条件反応という測度の別により、回顧的再評価の生じやすさが異なることが確認された。この知見は、知識の入力ではなく出力段階で回顧的再評価が生じることを示唆している。これらの結果は国内外の学会で発表しており、近く国際雑誌へ投稿する予定である。 現在は皮膚電気条件づけの事態を用いて、刺激強度による回顧的再評価への影響を検討している。実験の実施に際しては、条件反応の獲得に最適なパラメーターを探るための予備実験と、当該の実験事態にまつわる方法論的な問題に関する知見の収集を行った。その成果の一部は研究論文として発表している。今後の実験によって得られた知見は、随時論文としてまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者はこれまで一貫して表記の研究課題に取り組んでおり、関連する他分野の研究にも目を配りつつ、多くの実験研究を着実に遂行してきた。また、その成果を国内学会や研究会、専門分野の国際学会の発表を通じて公にしてきた。さらに、当該領域の実験研究に関しては必須である、コンピュータのプログラミングや生体生理現象の解析に関する知識や技能も積極的に習得してきた。 本年度は当初予定していた二つの研究のうち、随伴性判断の実験を終了し、続いて皮膚電気条件づけの実験準備を行った。随伴性判断の研究に関しては、国内外の査読誌に投稿予定の草稿を複数有しており、推敲後、近く投稿する予定である。また、当初の予定にはなかったものの、核磁気共鳴画像法によって脳活動を測定する機会を得た。なお、皮膚電気条件づけの研究では予備実験と文献の収集を行っており、その一部を研究論文として発表している。上記の進捗状況から、研究計画はおおむね順調に進展していると研究代表者は判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は予備実験によって明らかとなった最適なパラメーターを用いて、皮膚電気条件づけの実験を実施する予定である。研究の進展によって得られる知見は、国内学会や研究会、専門分野の国際学会での発表を通じて公にする。これらの活動と並行して、これまでの研究で得られた結果と考察を基盤とした博士論文の作成を行う。本研究課題の推進によって得られた知見は、随時論文としてまとめ、国内外の査読誌に投稿する予定である。
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