2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J08278
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金谷 翔子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | 同時性知覚 / 視覚 / 聴覚 |
Research Abstract |
本研究の目的は、一対の視聴覚情報の発生源としての話者を我々が効率的に定位、認識できるメカニズムについて、視覚、聴覚、およびクロスモーダル認知に関する基礎的知見から説明することである。このためには、外界に多数存在する視覚情報と聴覚情報の対応付け、つまり発生源を共有すると考えられる視聴覚情報のバインディングがどのように行われているのか、という問題を解決する必要がある。 対応付けの最も重要な手掛かりである同時性知覚の時間限界を探るアプローチとして、バインディング課題が存在する。一定の時間周波数で特徴の交代する刺激を二つ提示し、同時に提示された特徴のペアを答えさせるもので、課題を遂行できる最大の時間周波数をバインディングの時間限界として測定する。これまでに様々な視覚刺激を用いて検討が行われてきた。視覚の同属性内の対応付けにおいては時間限界が比較的高く、かつ用いる刺激の属性や刺激同士の距離といった低次のパラメータによって影響を受けること、また一方で、視覚の異なる属性や視聴覚といった異なるモダリティ同士の対応付けにおいては時間限界が2~3Hzと低く、属性の組み合わせによらず常に一定の値になることが知られている。前者は特定の刺激属性に特化した低次の専用メカニズムの時間限界を、後者は複数の刺激属性およびモダリティにまたがる比較的高次の汎用メカニズムの時間限界を反映していると考えられる。 そこで本研究では視覚と聴覚における情報統合メカニズムの共通性について検討するため、聴覚においても視覚と同様に、処理の階層に応じた様々な情報統合メカニズムの時間限界が見られるかを調べた。視覚刺激として方位と色、聴覚刺激として純音や帯域制限雑音、反復ルプルノイズを用いて同属性内、異属性間の対応付けを行わせたところ、聴覚においても視覚と同様に、低次から高次までのどの処理段階が関与するかによってバインディング課題の時間限界が異なり、かつ異なる属性間の対応付けにおいては視聴覚で同じ、または類似のメカニズムが用いられることを示唆され、視聴覚の共通性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
時間的同期性に基づくバインディングの限界を調べるバインディング課題はこれまで主に視覚刺激を用いて行われてきた。本研究における聴覚への応用は先進的な試みであったが、刺激の適切な選択、実験環境の厳密な統制により、実験開始から数ヶ月後の日本視覚学会においてはベストプレゼンテーション賞を受賞するまでの成果を上げることができた。現在も新たな実験に向け検討を重ねている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では、視覚、聴覚を問わず異なる刺激属性同士、または異種感覚情報間の時間的な対応付けにおいては、比較的高次の汎用機構が用いられていることが示唆された。しかしこれまでに用いた聴覚属性は主に音高や音色を検出するメカニズムによって弁別される刺激であり、音源位置など未検討の属性が存在する。まずは他の聴覚属性を用いて結果の頑健性を確かめる必要がある。その後には、視聴覚に共通と考えられる高次の特徴統合メカニズムと、注意や記憶といった既知の機構との関連、またはそれらが果たす役割を検討する予定である。
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