2011 Fiscal Year Annual Research Report
非一様宇宙モデルを用いたダークエネルギー問題およびコペルニクス原理の検証
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11J08343
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西川 隆介 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ダークエネルギー / 構造形成 / コペルニクス原理 |
Research Abstract |
23年度は,研究課題「非一様宇宙モデルを用いたダークエネルギー問題およびコペルニクス原理の検証」の遂行のために,特に宇宙の大規模構造形成に注目して研究を行った.宇宙の構造形成は背景の宇宙モデルの性質を強く反映することが期待されるので,モデルの検証に有用と考えられている.具体的な研究結果について以下の2事項に分けて記す. 1.非一様宇宙モデル上の摂動方程式を解き,密度ゆらぎの解を求めた. 宇宙の大規模構造は相対論的摂動方程式を解くことによってそのふるまいを知ることができるが,非一様宇宙モデルは時空の対称性が低いため,これまで摂動方程式を解くことはできなかった.それに対して私と共同研究者は,非一様宇宙モデルを近似的に扱うことによって摂動方程式を解く方法を考案した,具体的には背景の非一様モデルをより対称性の高い一様等方宇宙と等方的な摂動に分けて,その時空上に我々の興味の対象である非等方的な摂動を加えた.実際にその方法で摂動方程式を解き,密度ゆらぎを求めることができた. 2.角度成長因子,角度成長率を用いて非一様宇宙モデルと一様等方モデルの違いを明らかにした. 密度ゆらぎそれ自体は観測量ではないので,求めた密度ゆらぎから観測可能量である角度成長因子,角度成長率を求めた.そして具体的な非一様宇宙モデルを用いてそれらを計算し,標準宇宙モデル(一様等方宇宙)との構造形成における違いを明らかにした,非一様モデルは密度分布の非一様性のために場所によってゆらぎの成長率が異なるが,それは角度成長率に強く反映され,標準宇宙モデルではみられない特徴が表れることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
23年度は,球対称な巨大ヴォイドの非一様宇宙モデルにおける密度ゆらぎの成長を,一様等方宇宙における非線形摂動近似を用いて解析を進めた.そしてこれまでこの分野の研究者が,厳密性に欠ける直観的な近似方法で行ってきた解析である程度予想されていた結果を再現した.さらに,これまで予想されていなかった局所的な非等方性の効果を明らかにすることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析で求められた非線形摂動近似の解を用いて,非一様宇宙モデルにおける光子の伝搬を求める.宇宙背景放射として観測される光子は、宇宙の晴れ上がりから現在まで局所的な重力ポテンシャル,つまり時空の摂動の効果を受けながら伝播する.この効果を積分Sachs-Wolfe効果といい,ゆらぎの進化と深く結びついている.積分Sachs-Wolfe効果を計算し,現在得られている観測結果と比較することでこのモデルの検証を行う.
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Research Products
(3 results)