2012 Fiscal Year Annual Research Report
非一様宇宙モデルを用いたダークエネルギー問題およびコペルニクス原理の検証
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11J08343
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西川 隆介 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | コペルニクス原理 |
Research Abstract |
24年度は研究課題「非一様宇宙モデルを用いたダークエネルギー問題およびコペルニクス原理の検証」の遂行のために、特に非一様宇宙モデル上の銀河や銀河団などの構造形成に注目して研究を行った。これらは宇宙モデルの性質を強く反映することが期待されるので、非一様宇宙モデルの検証に有用と考えられている。具体的な研究成果について以下に記す。 宇宙の構造は宇宙初期に存在した小さなゆらぎが成長して形成されたと考えられている。そのゆらぎの統計的性質は密度ゆらぎ相関関数によって特徴づけられる。私は共同研究者とともに、非一様宇宙モデル上の密度ゆらぎ相関関数を解析した。そして、その関数に統計的な非等方性が現れることを明らかにした。また、その非等方性は宇宙膨張の局所的な非等方性に起因することがわかった。これらの結果をまとめた論文を現在執筆中である。このような非等方性は標準的な宇宙モデルである一様等方モデルには現れないので、非一様宇宙モデルの検証に強力な手段となることが期待される。 非一様宇宙モデルは背景時空の対称性が低いために、その時空上の場の方程式を解析的に解くことが非常に困難である。これまで、非一様性の小さな場合の非一様宇宙モデルの上の摂動方程式を解析してきたが、より広いクラスの非一様宇宙モデル上の構造の発展を追う簡潔な手段は知られていなかった。そこで、24年度は、広いクラスの非一様宇宙モデル上の構造形成の発展を解析する方法を構築した。我々は背景時空の非一様性のスケールと銀河団などの構造のスケールの差に注目し、ニュートン近似に基づく新たな解析的手法を考案した。この方法を用いて、構造形成を記述する場の方程式系は一様非等方な時空上の場の方程式系と最低次で一致することが確かめられた。その成果をまとめた論文を現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
相関関数の非等方性について明らかにした研究について、銀河分布の観測から非一様宇宙モデルに制限を付けることができることを示した極めて重要な成果と評価する。また、非一様宇宙モデルにおけるニュートン近似の定式化は、巨大ボイドモデルにおける非線形ステージの構造形成を研究することを可能にする画期的な成果と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題遂行のために、まず、先行研究で提案した非一様宇宙モデル上の相対論的摂動論を発展させる。また、非一様宇宙モデル上の宇宙論的ニュートン力学を構築する。そして、それらの解析方法を用いて、背景時空に存在する宇宙論スケールの非一様性が構造形成に与える影響を、線型領域から非線型領域まで多岐に渡り明らかにする。 さらに、理論解析で得た結果を銀河分布や宇宙背景輻射などの観測から得られている結果と比較して非一様宇宙モデルを検証する。また、解析した結果を手がかりにしてコペルニクス原理の正当性を決定づける新たな観測量を提案する。
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Research Products
(2 results)