2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子ドナー・アクセプター連結白金錯体を用いたスピン制御型光電子移動の研究
Project/Area Number |
11J08419
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
杉村 亮治 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 白金錯体 / ポルフィリン / 光電子移動 |
Research Abstract |
申請者は、これまで、光エネルギーの有効利用を目的として、白金錯体(Pt)を三重項増感剤として用いる新たな可視光駆動型の電荷分離物質を開発している。白金ジアセチリド錯体(Pt)に電子供与体(D)及び電子受容体(A)を連結したD-Pt-A系を合成し、高効率(96%)で約1μsの寿命をもつ電荷分離状態の発生に成功している。ここで用いたPtジアセチリド錯体は可視部に比較的大きな吸収(λ_<max>=430nm, ε=10000M^<-1>cm^<-1>)を有するものの、太陽光をターゲットとした場合には更なる長波長化、吸収の高強度化が必要であった。そこで、本研究では吸収の長波長化と高強度化を目標として白金ポルフィリンを三重項光増感部として用いる電荷分離システムを構築した。具体的には、トリフェニルアミンを電子ドナー、ナフタレンジイミドを電子アクセプターとした白金ポルフィリン(λ_<max>=400nm, ε=350,000M^<-1>cm^<-1>, 510nm, ε=30,000M^<-1>cm^<-1>)を設計・合成し、各種測定を行うことによってその光物性を明らかにした。ナノ秒過渡吸収スペクトルでは、白金ポルフィリン部をレーザー励起することでトリフェニルアミンラジカルカチオン(750nm)及びナフタレンジイミドラジカルアニオン(480,610nm)の吸収が観測され、電荷分離状態が生成していることを明らかにした。特に、ベンゾニトリル中では良好な結果が得られ、100μsを超える長寿命の電荷分離状態が観測された。しかし、THF中では、数十マイクロ秒程度の電荷分離状態は生成したものの、白金三重項種から電荷分離状態への変換速度が遅い難点もあることが分かった。 今後、ナフタレンジイミド部分に電子吸引性置換基を導入することにより白金三重項種から電荷分離状態への変換速度を高速化、量子収率の向上、中心金属の検討、太陽電池への応用検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、これまで検討を行ってきた白金ビピリジン錯体における問題点であった長波長部の吸収の高強度化を、白金ポルフィリンを三重項光増感部として用いることにより達成した。さらに、その電荷分離状態の寿命も百マイクロ秒を超えるものであり、今後の更なる発展に期待することが出来る結果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、申請者は電子ドナー・アクセプター連結型白金ポルフィリンにおいて、ベンゾニトリル中、光励起により百マイクロ秒を超える非常に長寿命の電荷分離状態を生成することに成功している。しかしTHF等の溶媒中では、白金三重項種から電荷分離状態が生成する速度が遅いという問題が判明している。そこで現在、電子アクセプター部にトリフルオロメチル基等の電子求引性基を導入し、より電子移動を速く起こすことによって量子収率の改善を目指している。そして、この系において良好な結果が得られれば、白金の代わりに亜鉛やパラジウム等の金属を導入することによる光物性の変化、及び実際に太陽電池のデバイスへ応用することについても検討する予定である。
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