2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳におけるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンと神経回路可塑性
Project/Area Number |
11J08513
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
森田 晶子 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 血液脳関門 / NG2 / 血小板由来成長因子 / Notch |
Research Abstract |
これまでの研究で、脳における主要な細胞外マトリックス成分であるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの発現が神経活動依存的に変化することを明らかにしている。本年度はコンドロイチン硫酸プロテオグリカンNG2に着目し研究を進めた。脳血管系は、成熟に伴い血液脳関門を形成し、脳-血管間の物質透過を制限する。未熟な脳血管においてはNG2が高い発現を示すが、血管の成熟に伴いその発現は減少する。成熟脳でも脳室周囲器官と総称される脳部位は一般的な血液脳関門を持たない。センサー系脳室周囲器官の脳弓下器官、終板器官、最後野では、浸透圧、イオン、化学物質や病原体といった末梢情報を感知し、分泌系脳室周囲器官の正中隆起や下垂体後葉ではペプチドホルモンの分泌制御を行うが、脳-血管間の情報交換メカニズムは不明である。本研究では、脳室周囲器官の血管系におけるNG2を含む各種タンパク質の発現および局在を調べた。また、マウスadult脳のセンサー系脳室周囲器官において浸透圧刺激による血管構築変化がおきるかどうかを検討し、次の結果を得ることができた。1、脳室周囲器官では、NG2が特異的に高い発現を示し、血小板由来成長因子受容体B(PDGFRB)、NotchリガンドDLL4などの発生過程の脳血管で発現が認められるタンパク質も発現を示した。NG2とPDGFRBは血管内皮細胞を取り巻くペリサイトに、DLL4はペリサイトと内皮細胞の両方に局在した。2、センサー系脳室周囲器官において、浸透圧刺激によってNG2、PDGFRB、DLL4の発現量が変化した。3、浸透圧刺激によって血管内皮細胞とペリサイトの細胞サイズが増大した。4、低分子量物質FITCの血管透過性が浸透圧刺激によって増大した。これらの結果より、センサー系脳室周囲器官の血管系は、末梢情報の変化に従い血管構築を変え、血管透過性も変化することがわかった。この構築変化はおそらくNG2、PDGFRB、DLL4-Notchを介する。本研究は脳-血管間の情報交換メカニズム解明において重要な意義を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バソプレッシン神経におけるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの神経活動依存的分解メカニズム解明について、大幅に研究対象部位と研究内容を拡大し、上の研究実績を得た。海馬神経可塑性におけるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの関与と、培養系でのコンドロイチン硫酸プロテオグリカンによるシナプス可塑性の制御メカニズム解明については現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の2点を重点的に推進する。 1)成体脳の脳室周囲器官の血管において、未熟血管で発現の高いコンドロイチン硫酸プロテオグリカンNG2の高い発現が認められたこと、末梢情報変化による構築変化が認められたことから、脳室周囲器官の血管構築メカニズム解明を重点的に行う。当初の計画では神経細胞を取り巻く細胞外マトリックスとしてのコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの神経可塑性制御メカニズムに着目していたが、神経細胞、アストロサイト、血管の構築変化について総合的に取り組む。 2)シナプス可塑性マーカーとしてよく知られているGAP-43は、培養系でのコンドロイチン硫酸プロテオグリカンによるシナプス可塑性制御メカニズム解明に用いる予定である。しかし、GAP-43のシナプスでの局在を示す組織学的研究がほとんどないので、初代培養神経細胞を用いてシナプス形成期における局在および発現変化について調べる。
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