2012 Fiscal Year Annual Research Report
機械刺激依存的プロモーターを用いた生体応答の可視化の研究
Project/Area Number |
11J08517
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
番匠 俊博 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | microRNA / 心臓弁形成 / メカニカルストレス / ゼブラフィッシュ / 創傷治癒 / 線維化 |
Research Abstract |
心臓弁は、血流や心拍などの機械刺激が適切に維持されないと形成不全になる。しかしながら、機械刺激がどのように遺伝子発現を調節し、心臓弁形成を制御するかは長年不明であった。申請者は、miRNA・21がゼブラフィッシュにおいて、血流によってその発現が弁の形成領域に誘導されることを見出した。そしてmiR-21がMAPKの活性化を介して、弁形成時の細胞増殖を調節することを明らかにした。この研究成果はNature Communicationsに論文投稿され、大幅な追加実験と改訂を今年度に行った。すでに査読者からは同意を得ており、実質的にin pressの状態にある。この研究成果は、機械刺激は形態形成に重要な要素であることを改めて強調するものである。さらには、遺伝子異常をもたない先天性心疾患の発症、心不全などの循環障害を理解する上で極めて重要な知見をもたらすと期待できる。 加えて、miR-21 KOマウスの解析が進行している。miR-21 KOマウスは、ゼブラフィッシュでのmiR-21ノックダウンとは表現形が異なるが、皮膚の創傷治癒過程に大きな違いが認められた。通常、皮膚の創傷治癒では炎症反応やコラーゲンの蓄積により、線維化が起こり、瘢痕(scar tissue)が残るが、miR-21 KOマウスでは創傷治癒が速く進行し、線維化の緩和が観察された。これらの結果は、miR-21の機能の知見に新しい視点をもたらすと共に、臨床への応用も期待させるものである。miR-21を標的とする核酸医薬をデザインできれば、傷痕を残さずに、傷の治癒を達成できる可能性がある。今後はmiR-21の直接の標的の同定や、miR-21の発現誘導機構を詳細に解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
miR-21と弁形成の論文に関して、多くの追加実験を要求され、改訂作業に比較的時間を要したが、査読者から完全な同意を得ることができた。miR-21KOマウスに関しても、期待できるデータを得られ、これらのことから、研究はおおむね順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
miR-21KOマウスに関する論文が他グループから既にいくつか出されており、KOマウスのプロジェクトは急ぐ必要がある。特にmiR-21と創傷治癒に関する研究は今年度中の論文投稿を目指し、優先的に取り組む。また、miR-21は機械刺激に発現誘導されるが、miR-21を用いた先行研究は生体に機械刺激が負荷されたときのmiR-21の関与には着目していない。今後はマウスに機械的な負荷を与えたときに、miR-21が欠損していると、応答がどのように通常と異なるか観察する。例えば、マウスをトレッドミル試験し、四肢の骨格筋に負荷を与える。miR-21はPPARαという、脂質代謝の重要な制御因子を直接の標的をすること、培養細胞においてmiR-21は脂肪分化を調節することが報告されている。このことから、miR-21がエクササイズの刺激と脂肪燃焼とを結びつける因子と想定され、解析の焦点の一つになると考えている。
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Research Products
(3 results)