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2012 Fiscal Year Annual Research Report

暗黒物質の解明に向けた理論及び観測的基礎研究

Research Project

Project/Area Number 11J08582
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

鎌田 歩樹  東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特別研究員(DC1)

Keywords暗黒物質 / 宇宙構造形成 / 長寿命荷電重粒子
Research Abstract

構造形成において暗黒物質は主導的な役割を果たしたと考えられており、構造形成は暗黒物質の素粒子的性質を探る上でよい実験場である。標準的なACDM(暗黒エネルギー+冷たい暗黒物質)模型が予言する物質密度揺らぎは、観測される宇宙大規模構造(銀河・銀河団以上の構造)を説明する事に成功している。一方ACDM模型には、天の川銀河中に観測されている倭小銀河の数が、シミュレーション中の天の川銀河程度の大きさのハローに存在するサブハローの数よりも一桁程度小さいという問題(倭小銀河問題)が指摘されている。この問題を解決する候補の一つとしてWDM(温かい暗黒物質)が提案されている。WDMはその速度分散が圧力のように働き、小スケール構造形成を妨げる。また、
LLCHAMP(長寿命荷電重粒子)も倭小銀河問題を解決しうる。宇宙初期に作られたLLCHAMPはクーロン散乱により電子及び陽子と運動量をやり取りし、高温プラズマと音響振動するため、物質密度揺らぎの重力成長は妨げられる。LLCHAMPはいずれ崩壊し、電気的に中性な暗黒物質に変わる。LLCHAMPの崩壊の際、高温プラズマが音響振動し続けようとするのに対して、中性な暗黒物質は振動を止め重力ポテンシャルの底に停まろうとする。この際お互いの相互作用が摩擦のように働き、暗黒物質及び高温プラズマの密度揺らぎが共にならされてしまう(これを音響減衰と呼ぶ)。LLCHAMPの崩壊後、中性の暗黒物質は従来通りの重力成長をするため、物質密度揺らぎには音響減衰に対応するカットオフが残る。そのカットオフスケールはLLCHAMPの寿命で決まる。私は論文[3]でLLCHAMPの音響減衰がWDMの速度分散と同様に倭小銀河問題の解決策となる事を示した。しかし、これらのモデルが他の構造形成の観測と矛盾してはならない。そのような小スケールの構造の探査は、遠方クエーサーのスペクトル中のLyα雲による吸収線を用いて行うことができる。Lyα雲の光学的深さはその密度をトレースしており、スペクトルの一次元フラックスパワースペクトルについてシミュレーションと観測を比較することにより、物質密度揺らぎを探査することができる。私はLyα雲による吸収スペクトルからLLCHAMPの寿命やWDMの質量に制限を加える事を目標にしている。さらに論文[3]において、LLCHAMPと種々のWDMモデルの両者について適切に定義されたカットオフスケールを同じくすれば、線形物質密度揺らぎにおいて、カットオフスケールより十分小さいスケールでの揺らぎの減衰の仕方(ダンピングテイル)にしか違いが出ないことを示した。また、非線形成長の後には、ハローやサブハローの質量関数及びハロー中のサブハローの動径分布等ではその違いを区別できないことを指摘した。Lyα雲による吸収スペクトルを用いると、より高赤方偏移(z~2-5)の非線形成長が弱いと期待される構造を調べることができるので、ダンピングテイルにおける違いが区別できる可能性がある。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

私はLyα雲による吸収スペクトルからLLCHAMPの寿命やWDMの質量に制限を加える事を目標にしている。さらに論文[3]において、LLCHAMPと種々のWDMモデルの両者について適切に定義されたカットオフスケールを同じくすれば、線形物質密度揺らぎにおいて、カットオフスケールより十分小さいスケールでの揺らぎの減衰の仕方(ダンピングテイル)にしか違いが出ないことを示した。これは、Lyα雲による吸収スペクトルからの「ある」モデルに対する制限を「全て」のモデルに拡張できる可能性を意味しており、意義深いと考えている。

Strategy for Future Research Activity

本研究ではモデルパラメターを制限することを目的としているため、パラメタースペースを十分に掃く必要がある。
よって、1パラメター当たりの計算時間を最小にするために下記のような簡易化したモデルを用いて研究を進める予定である。1)光電離平衡を仮定し、Lyα雲の光学的深さはガス(バリオン)密度の2乗とガス温度の0.7乗に比例しているとする。2)ガスは断熱収縮しているとして、ガス温度はガス密度のβ(←パラメター)乗に比例しているとする。3)ガス(バリオン)密度は暗黒物質密度を十分よくトレースしている、もしくは、暗黒物質の物質密度を小スケールで適切な幅(←パラメター)のガウシアンでスムージングしたもので書けるとする。

  • Research Products

    (5 results)

All 2013 2012

All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 3 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] [1]Imprints of nonthermal ffino dark matter on small-scale structure2013

    • Author(s)
      be, M. , Kamada A. , Matsumoto, S
    • Journal Title

      Physical Review D

      Volume: 87 Pages: 63511

    • DOI

      10.1103/PhysReVD.87.063511

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Opnening the window to the cogeneis with Affleck-Dine nechanisn in gravity mediat2013

    • Author(s)
      Kamada, A. , Kawasaki. M, . Yamada, M
    • Journal Title

      Physics Letters B

      Volume: 719 Pages: 9-13

    • DOI

      10.1016/j.physletb.2013.01.017

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Structure of dark matter halos in warm dark matter models and in models with long-lived bharged massive partcle2013

    • Author(s)
      Kamada. A, . Yoshida. N, K. Kobri, T. Takahashi
    • Journal Title

      Journal of Cosmology and Astroparticle Physics

      Volume: 2.013

    • DOI

      10.1088/1475-7516/2013/03/008

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 温かい暗黒物質及び崩壊する荷電重粒子のおける銀河ハロー形成2012

    • Author(s)
      鎌田歩樹, 吉田直紀, 郡和範, 高橋智
    • Organizer
      日本天文学会2012年秋季大会
    • Place of Presentation
      大分大学
    • Year and Date
      2012-09-20
  • [Presentation] Structure Formation in Warm Dark Matter Models2012

    • Author(s)
      Ayuki Kamada
    • Organizer
      Workshop Meadon CIAS 2012 WARM DARK MATTER AND GALAXY FORMATION IN AGREEMENT WITH OBSERVATIONS
    • Place of Presentation
      AS Observatoire de Paris, Chateau de Meudos campus(invited)
    • Year and Date
      2012-01-06

URL: 

Published: 2014-07-16  

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