2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J08599
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
諫川 輝之 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 状況 / 環境情報 / 経路選択 / 避難行動 / スケッチマップ / 探索歩行 / 誘導サイン / 注視傾向 |
Research Abstract |
本研究は、様々な制約条件のもとで空間が人間の移動行動を動機づけるシステムについて、体系化を行なうことを目指している。本年度は以下の2つの柱で研究を行なった。 (1)緊急時の避難行動を動機づける物理的環境、および平常時から形成された空間的イメージの分析 前年度から継続して、津波発生時における住民の避難行動を対象に、移動を動機づけるプロセスの分析を行なった。まず、現地の環境調査と住民アンケート調査をもとに、個人の行動と物理的環境との関連を分析したところ、標高を理由に避難しなかった人は海から500m以上離れた集落に多いなど、一定の傾向が見られた。これをふまえ、個人の環境に対するイメージを把握するスケッチマップ法を利用した住民ワークショップを実施し、日常的に認知している空間構造と緊急時の行動の関連性を検証した。得られたマップには、海岸線と幹線道路の位置関係の取り違えや海抜の過大評価など、迅速な避難を妨げる空間構造が表われており、またそれらが日常的な生活圏域と関連していることが明らかになった。このことは沿岸地域の効果的な防災対策を考える上でも重要な研究成果と言える。 (2)探索歩行時における環境情報の受容傾向を定量化するための実験 歩行者と環境の相互作用を媒介する最も基本的かつ具体的な情報源である駅構内の誘導サインに着目し、その見つけやすさを定量化するための実空間実験を実施した。歩行者との位置関係が様々に異なるサインを選定し、被験者に特定の出口や乗り換え路線を探すという探索課題を与えて見つけたサインを指摘させた。その結果、(1)サインを発見しやすい範囲は歩行者の前方に広く、左右にずれるに伴い狭くなるある程度の領域を形成していること、(2)探索時の視線は視野上方に偏っており、床面サインの見落としが起こりやすいこと、(3)サインが連続的に同じ高さに配置された経路では見つけやすさが向上することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度実施した緊急時の避難行動に関する調査は、平常時の空間イメージや生活圏域の議論へと発展し、新たに探索歩行時の情報受容に関する実験研究を行なった。これらは、いずれも当初の研究目的に沿ったものであり、その分析結果は本研究で仮定した枠組みが空間移動の動機づけを説明する上で有効なことを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)の研究については、今後も現地でのワークショップ等の実践的取り組みを通じて、日常生活と関連した緊急時の避難支援策の提案へと展開させていく。その成果は国際会議で発表し、論文にまとめるとともに、広く一般に周知を図る予定である。 (2)の研究では、誘導サインの位置にとどまらず、歩行者の移動軌跡や周囲の物理的状況も変数として導入し、環境から受容する情報の抽出傾向に関して更なる考察を行なっていく予定である。 そして、今までに検討してきた様々な状況における空間移動の動機づけに関する人間一環境系の諸要因を整理して、包括的な理論構築を目指すこととする。
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