2011 Fiscal Year Annual Research Report
波動関数理論に基づく高精度な第一原理計算手法の開発とそれによる強相関電子系の研究
Project/Area Number |
11J08609
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
越智 正之 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 計算物性物理 / 第一原理計算 / 強相関系 / 高精度計算 / 基礎的な半導体物性 / 方法論開発 |
Research Abstract |
固体物性の第一原理計算は、固体の本質的な性質を調べる基礎物理においても、また現実の物質・デバイスの物性を調べる応用計算においても、現在、重要な役割を担っている。しかし、従来手法では精度の面から取り扱いが困難な系が存在することも広く知られている。本研究課題はそのような高精度計算において有望と思われる理論の一つ、「トランスコリレイティッド(TC)法」の理論開発を目的としており、平成23年度は以下の成果が得られた.(1)プログラムコードの開発およびその適用:TC法の固体への適用を行っているのは、世界でも研究代表者の属するグループだけであり、従ってプログラムコードも独自に開発したものを利用している。そのため、その開発および適用事例の蓄積は重要な課題の一つである。平成23年度においては、後述の(2)の方法論をコードに実装し、固体ケイ素や炭化ケイ素に適用した。(2)方法論の開発(ジャストロウ因子の最適化):TC法では、多体波動関数をジャストロウ因子とスレイター行列式の積の形に仮定する。従来、TC法の固体計算ではジャストロウ因子はごく簡単な形を用いていたが、多体効果の高精度な取り扱いには、この部分の精密な最適化は不可欠である。平成23年度においては、ジャストロウ因子を従来の単純な形から、より一般の多項式展開を含んだ形に拡張し、さらにそれを最適化する手法を開発し、先述の通り簡単な系に適用し、我々の方法論が機能することが確認された。現在はまだ適用が出来た段階だが、今後は精度がどの程度改善されるのかを確認することが課題となる。(3)TC法の高速化に関する論文投稿:TC法は、平成21年度に計算の高速化に成功したことによって、固体計算において可能性が大きく広がった。平成23年度においては、この点に関して執筆した論文を投稿し、受理、掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2011年3月の東日本大震災に伴う全国的な停電の影響で、スーパーコンピュータをはじめとした計算資源の使用に制約が生じたため、やや遅れが生じている。具体的には、平成23年度内にジャストロウ因子最適化による精度向上を確認するまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、.ジャストロウ因子最適化に関しては、現在よりも最適化の自由度を増やし、精度改善を目指す。またジャストロウ因子中の長距離パラメータについては、小さいセルでの安定した最適化が困難だったため、別の指導原理に基づく最適化を行う方法論を開発する。そしてそれらを、様々な種類の半導体に適用し、ジャストロウ因子最適化の影響を調べる予定である。また、それに関連するコード開発も並行して行う。
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