2012 Fiscal Year Annual Research Report
波動関数理論に基づく高精度な第一原理計算手法の開発とそれによる強相関電子系の研究
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11J08609
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
越智 正之 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 計算物性物理 / 第一原理計算 / 強相関系 / 高精度計算 / 基礎的な半導体物性 / 方法論開発 |
Research Abstract |
第一原埋計算に基づく固体物性の研究は、物理現象の微視的理解を得る上で大いに有用であり、様々な場面において重要な役割を担っている。しかし、従来手法では精度の面から取り扱いが困難な系が存在することも広く知られており、本研究課題はその問題を解決するため、「トランスコリレイティッド(TC)法」の理論開発を目的としている。平成24年度は以下の成果が得られた。(1)ジャストロウ因子の最適化手法の開発 : TC法では、多体波動関数をジャストロウ因子とスレイター行列式の積の形に仮定する。多体効果の高精度な取り扱いには、ジャストロウ因子の最適化は不可欠であり、平成23年度からそれを最適化する手法を開発してきた。平成24年度においては、本最適化手法によってバンドギャップの大きな固体のバンドギャップの精度が大幅に向上することが確かめられた。本成果は、TC法を精度良く適用することの出来る範囲を広げる重要な意義がある。(2)固体の光吸収スペクトルの高精度な第一原理計算手法の開発 : 上述のジャストロウ因子最適化を、TC法に基づく励起状態計算手法(TC-CIS法)と組み合わせることによって、固体の光吸収スペクトルの高精度な第一原理計算を実現することが出来る事を確かめた。実際、固体のフッ化リチウムの励起し束縛エネルギーが極めて精度良く再現されることが確かめられた。本成果によって、固体の励起状態を波動関数理論に基づいて精度良く記述出来ることがはじめて示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたジャストロウ因子最適化を実現し、バンドギャップの精度改善をすることが出来た。また、それに基づいて光吸収スペクトルの高精度計算を行うことも出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
ジャスロウ因子化をより広い範囲の物質に適用することによって、トランスコリレイティッド法およびそのために開発したジャストロウ因子最適化手法の適用範囲がどの程度広くなったのかを精査する。また、光吸収スペクトルの高精度計算についても同様、当該年度に有用性を確かめることが出来たため、別の物質にも適用しその性質を精査する。
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