2012 Fiscal Year Annual Research Report
惑星物質の進化過程解明のための局所同位体化学的アプローチ
Project/Area Number |
11J08649
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
羽場 麻希子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ジルコン / 玄武岩質ユークライト / メソシデライト / 希土類元素 / U-Pb年代 |
Research Abstract |
玄武岩質ユークライトのジルコンは太陽系形成初期の惑星物質の進化に対して年代軸を与えることのできる重要な鉱物である.しかし,母天体におけるジルコンの形成過程についての詳細な議論は行われていない.そこで,本研究では昨年度の研究で得られた6つの玄武岩質ユークライトのジルコンの主要元素濃度および希土類元素(REE)濃度から,母天体におけるジルコンの形成過程を解明することを試みた. ユークライト中のジルコンの粒径と変成度には相関があることが示唆された.変成度の高いユークライト中には粒径の大きなジルコン(~40μm)が見つかる可能性が高い.得られたジルコンのREE濃度とジルコンーメルト間のREEの分配係数を用いて,ユークライト中のジルコンが形成した時のメルトの組成を求めた.その結果,変成度の高い玄武岩質ユークライト中のジルコンは母天体における変成作用の間に生じたメルト中で過成長を起こした可能性が見出された. 以上の結果から得られた隕石中のジルコンの形成メカニズムを石鉄隕石であるメソシデライトに応用し,メソシデライトの形成年代に関わる研究を行った. メソシデライトはシリケイト部分と鉄ニッケル合金からなるメタル部分から構成される隕石である.この隕石は母天体において複雑な変成作用を受けたため,形成年代を求めるのが難しく現在までに下限値のみ報告されている.本研究では,メソシデライト中において,これまで隕石中で見つかっているジルコンで最も大きなジルコンC300μm)を同定することに成功した.また,このジルコンは産状からメタルとシリケイトが混合した時に形成したと考えられる.高感度高分解能イオンマイクロプローブを用いたU-Pb年代は45.20±0.14億年であり,この年代はメソシデライトを形成したメタルとシリケイトの混合イベントの年代を表していると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は次年度行う予定である隕石中ジルコンの^<244>Pu-Xe年代に向けて,ユークライト中のジルコンの形成過程に関する考察,メソシデライト中の非常に大きなジルコンの同定を行った.ユークライト中のジルコンは粒径が非常に小さく,^<244>Pu‐Xe年代測定を行う上で取扱いや求められる精度に見合う粒子の確保の問題がある.一方で,メソシデライトのジルコンは粒径が非常に大きいため,zaaPu‐Xe年代がユークライトのジルコンより容易であると考えられる.従って,本年度の研究結果は次年度の限石中244Pu-Xe年代測定法の確立向け,大きな前進であったと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はユークライトおよびメソシデライト中のジルコンを用いてジルコンの244Pu-Xe年代測定法を確立させる.244Pu-Xe年代の確立に向けて,太陽系形成時の244pU存在度の決定が必要になるが,これまで244Pu初期値について,太陽系内の不均一性を含めた詳細な議論は行われていない.本研究では次年度,この問題についてジルコンだけでなく,244Puがかつて取り込まれたと考えられる複数の鉱物に対して244Puの娘核種であるXeの同位体分析を行う.そして,244Puの太陽系形成時の不均一性の評価,およびそれを基にして,太陽系244Puの初期値を決定する.
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