2012 Fiscal Year Annual Research Report
リン脂質二重膜における静電相互作用が支配する相分離ダイナミクス
Project/Area Number |
11J08690
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
下川 直史 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教
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Project Period (FY) |
2011 – 2013-03-31
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Keywords | リン脂質 / 二重膜 / ベシクル / 相分離 / 静電相互作業 / ミクロ相分離 |
Research Abstract |
本研究の目的はソフトマターと呼ばれる物質群に含まれる、両親媒性分子が自発的に形成する秩序構造を明らかにすることにある。特に、静電相互作用など複雑な相互作用により形成される構造の安定性やダイナミクスを実験・理論の両面から取り組むことで、ソフトマターにおける秩序形成を一般的に議論することを目標とする。 両親媒性分子の一つであるリン脂質は、水中で自発的に二重膜構造を形成する。この二重膜構造は細胞膜や生体膜の基本構造である。飽和脂質・不飽和脂質・コレステロールの三成分から成るモデル細胞系において、ある温度以下で飽和脂質とコレステロールの多い領域と不飽和脂質の多い領域に相分離することが知られている。その際形成される飽和脂質とコレステロールの多い領域(ドメイン)は、細胞におけるシグナル伝達や膜輸送の足場となっている可能性が示唆されている。 生体膜には多くの荷電脂質が含まれているが、静電相互作用が相分離に及ぼす影響に関しての研究は立ち遅れているのが現状である。現在までに荷電脂質を含むリン脂質二重膜では相分離が抑制されることを実験的・理論的に示してきた。しかし、実験において荷電脂質が有する電荷を遮蔽しようと塩を加えた結果、相分離は進行したが相分離ドメインが塩の添加により変形してしまいドメインの形状・ダイナミクス等の情報が得られなかった。 そこで、変形を伴わずさらに室温付近でも相分離が観察できるような工夫を施し実験を行った。一つには膜に張力をかけることで相分離温度を引き上げ室温でも相分離が観察できるようにした。二つ目は浸透圧がかからないように膜の両側に同じ濃度の塩溶液を加えた。どちらの場合も変形せずに相分離を観察することに成功した。また荷電脂質はドメインを作りやすいこと、その融合のダイナミクスが中性のドメインと比較して遅くなることなどを見出した。これらの結果は静電相互作用の調節によりミクロ相分離構造左形成することができる可能性を示唆している。
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Research Products
(6 results)