2012 Fiscal Year Annual Research Report
非可換渦のダイナミクスとその高密度QCD物質への応用
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11J08694
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
広野 雄士 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | カラー超伝導 / 非可換渦 / クォーク・グルーオン・プラズマ |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続いてカラー超伝導渦の電磁的性質の研究、またカラー超伝導渦の非可換統計に関する研究を行った。これらに加えて、新たに下記の研究を行った。 [Cu+Au衝突を用いたクォークグルーオンプラズマ(QGP)の電気伝導度の推定]渦による記述の、低密度・高温状態で現れるクォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)への応用を考える過程で、QGPの電気伝導度を実験から推定する方法を考案した。最近ブルックヘブン国立研究所にある加速器RHICでは、銅原子核と金原子核による非対称な重イオン衝突実験が行われている。金原子核同士の衝突とは異なり、Cu+Au衝突では銅原子核側に向う賞味の電場が存在する。この電場に対して衝突後に生成されたQGP内で電荷移動が起こり、電荷分布が双極子的に変形すると期待できる。この双極子の大きさがQGPの電気伝導度を反映しており、粒子分布の形を特徴付けるハーモニクスのうち一次の量の電荷依存部分が電気伝導度の情報を持っていることを指摘した。本研究の結果は、今まで計測するのが困難であったQGPの電気伝導度測定の端緒を開くものである。 【回転系での格子QCD計算]格子QCD計算は、通常は平衡状態のQCD物質の性質を調べるのに用いられる。本研究では、回転系のQCDの作用から出発することにより、回転系での格子QCD計算を初めて定式化した。構築した枠組みを用いてモンテ・カルロ計算を行い、回転系から見たQCD真空が有限の角運動量を持つことを確認した。 [ホール粘性に対するStreda公式の導出]本研究では、まず粘弾性理論が電磁気学とよく似た形式で記述することを指摘した。特に「磁場」にあたる部分は通常の重力理論では現れない振率という量になる。この定式化を用いて、ホール粘性に対するStreda公式を導出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定にあったFFLO状態における渦については結果が未だ出ていないものの、それ以外の部分、特に高密度QCDに留まらない部分については研究の進展があった。渦による記述を低密度・高温QCD物質へも応用できるのではと考え、その過程で電気伝導度を推定する方法を発見した。また回転系を第一原理計算によって調べる道を切り開くものとして、回転系での格子QCD計算の定式化を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にあるように、渦の集団的挙動に関する研究を進める。また低密度の物理への渦の描像の応用についてもさらに研究を進める予定である。
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Research Products
(8 results)