2013 Fiscal Year Annual Research Report
非可換渦のダイナミクスとその高密度QCD物質への応用
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11J08694
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
広野 雄士 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非可換渦 / 位相欠陥 / ドメインウォール / クォークグルーオンプラズマ |
Research Abstract |
本年度は下記二点の研究成果を得た。 [カイラル対称性の破れに伴って現れるドメインウォールの性質] 低温・低密度でQCD物質はカイラル対称性の破れたハドロン相を呈する。ハドロン相ではドメインウォールと渦の複合ソリトンが存在するが、このような複合的構造体が実際の世界にあるとすれば観測的に知られている宇宙のエネルギー密度と矛盾してしまうことが知られていた(ドメインウォール問題)。本研究では、非可換渦の寄与を考えるとウォールと渦の複合構造が溶解することを位相的観点から示し、その溶解の様子を数値シミュレーションにより確認した。さらに、ドメインウォール中に非可換渦のループができることによりウォールが量子的に崩壊することを指摘し、その崩壊確率の見積もりを行った。この2つの効果の帰結として、カイラル相転移ではドメインウォール問題が現れないことを指摘した。 [Cu+Au衝突を用いたクォークグルーオンプラズマ(QGP)の電気伝導度の推定]低密度・高温状態で現れるクォークグルーオンプラズマにおける渦ダイナミクスを考察する過程で、QGPの電気伝導度を実験から推定する方法を発見した。最近ブルックヘブン国立研究所にある加速器RHICでは、銅原子核と金原子核による非対称な重イオン衝突実験が行われている。金原子核同士の衝突とは異なり、銅・金衝突では銅原子核側に向う賞味の電場が存在する。この電場に対して衝突後に生成されたQGP内で電荷移動が起こり、電荷分布が双極子的に変形すると期待できる。この双極子の大きさがQGPの電気伝導度を反映しており、粒子分布の形を特徴付けるハーモニクスのうち一次の量の電荷依存部分が電気伝導度の情報を持っていることを指摘した。またこの効果の大きさが衝突のインパクトパラメータにどう依存するのかを調べるために、中心部を貫く電束の大きさのインパクトパラメータ依存性を解析した。本研究の結果は、今まで計測するのが困難であったQGPの電気伝導度測定の端緒を開くものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カラー超電導における非可換渦の集団構造に関しては、技術的困難もあり未だ研究成果として発表できるまでに至っていない。一方で、低密度のハドロン相で非可換渦が大きな物理的役割を果たすことを見出した。クォークグルーオンプラズマの電気伝導度の推定についてもより詳細な解析を進めており、全体としては概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Research Products
(5 results)