2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J08747
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊形 尚久 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ブラックホール / ブラックリング / ストリング |
Research Abstract |
ブラックホール・ブラックリングの周辺における質点やストリングの動力学について,以下の3つの結果を得ることができた. ホライズンがリング構造をもつブラックリング解は,非自明な幾何学的構造をもつ.この時空における測地線の解析を行った結果,.時空のある有界な領域に束縛される軌道が存在しうることを明らかにした.さらに束縛軌道の振舞いを分類することにより,時空を特徴付ける臨界パラメーターを決定した.また測地線の軌道にカオス性が出現することを明らかにした.この結果は,ブラックリング時空の隠れた対称性が存在しないことを示唆するものである. 物理的な初期条件のもとでブラックホールに落下した2粒子が,ブラックホールのホライズン近傍で衝突した場合に,重心エネルギーが任意に大きくなる現象が知られている.宇宙物理的な天体やブラックホールは,周囲に磁場を有してプラズマが降着している状況が一般的である.そこで,ブラックホール時空に試験電磁場を置いた時空のホライズン近傍において,荷電粒子の衝突による重心エネルギーを評価するための定式化と,特定の磁場配位を設定した上で重心エネルギーの評価を行った.その結果,電荷をもたない粒子衝突と比較して,荷電粒子系の重心エネルギーが十分大きくなることを明らかにした. 4次元時空において,一般に閉じたストリングはカスプとよばれる特異点をもつ.一方,高次元時空中の閉じたストリングはカスプ形成が一般的ではなく,定常な閉ストリング解の存在が許される.そこで,高次元の平坦な時空において閉じたストリング解を具体的に構成した.その中にはストリングの世界面が一様になるトロイダルスパイラルストリングが含まれていて,ストリングが重力波などでエネルギーを放出して,最終状態として実現されると期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブラックホールやブラックリングの周りでの試験粒子および試験ストリングの運動を解析し,相対論的効果による定性的な特徴を見出している.研究の成果は,すでに,査読制度のある学術雑誌に1編の論文が出版され,2編の論文は印刷,投稿準備中である.このことは,期待通り研究が進捗していることを示している.
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Strategy for Future Research Activity |
ブラックホールの周辺における粒子やストリングの運動の解析をさらに推進し,ブラックホールの幾何学的性質の理解を継続して行っていく.とくに前年度の研究結果として得られている新しいブラックホールの物理的性質のさらなる理解を目指して,研究を継続していく,
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Research Products
(4 results)