2011 Fiscal Year Annual Research Report
ホスホリパーゼCδ1の表皮特異的欠損が全身性白血球増加を引き起こす機構の解明
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11J08751
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
金丸 佳織 東京薬科大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イノシトールリン脂質 / 皮膚 / PLCδ1 / IL-17 |
Research Abstract |
1、表皮特異的にPLCδ1を欠損したマウス(PLCδ1cKOマウス)の皮膚におけるIL-23の増加とIL-17の増加の因果関係を明らかにする目的で、IL-23中和抗体を用いた検討を行い、IL-17の発現増加がIL-23に依存することを明らかにした。 2、PLCδ1cKOマウスで見られる顆粒球増加がIL-17に依存するのかを検討するためにPLCδ1と同時にIL-17A、IL-17Fを欠損したマウスを作成したが、IL-17A、IL-17F欠損の影響により顆粒球数が大きく変化してしまい解析を行うことができなかった。そこで、代換え手段として再構築系を用いて、PLCδ1cKOマウスにおいて観察される顆粒球増加因子G-CSFの産生増加がIL-17に依存することを明らかにした。 3、IL-23特異的抗体を用いた免疫組織染色により、PLCδ1cKOマウスの皮膚におけるIL-23の産生細胞はケラチノサイトであることを明らかにした。 4、PLCδ1cKOマウスの表皮においてPLC活性、及びPLC下流因子PKCの活性が顕著に低下していることを明らかとした。さらにPLCδ1cKOマウスの表皮において薬剤処理によりPLC下流因子を活性化したところ、IL-23の発現レベルが正常化されることを明らかにした。 以上の成果により、表皮のPLCδ1の欠損に伴うPLCおよびその下流因子の活性低下がケラチノサイトからのIL-23の産生亢進を介し、皮膚局所および全身におけるIL-17の増加を誘導することが強く示唆された。皮膚におけるIL-23、IL-17の異常産生は乾癬等の炎症性皮膚疾患の発症に重要な役割を担っている。本成果はIL-23、IL-17の産生制御にPLCδ1が関与することを明らかにしたものであり、上記の疾患に対する新たな治療法の開発に繋がる可能性を秘めておりとても意義深いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全ての実験計画がほぼ予定通り進められた。若干、計画通りに進める事が困難である部分もあったが、代換え手段を用いることにより当初の目的を果たすことができた。以上のことからおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
表皮でPLCδ1を欠損させたマウスの皮膚ではIL-23やIL-17の増加が見られている。皮膚におけるIL-23、IL-17の異常産生は炎症性皮膚疾患である乾癬の発症、増悪化に重要な役割を担っているため、今後はPLCδ1と乾癬との関連について検討を進めていく。まずは、乾癬モデルマウス皮膚やヒト乾癬患者皮膚において、PLCδ1の発現変化が見られるのかについて検討する。
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