Research Abstract |
以下の2点を実施した. (1)複数状況を持つ自由選択課題における前頭前野と線条体の神経活動 強化学習理論は,各状況での行動と,その行動で得られる報酬から,最適な行動を探索・学習する.これまで,強化学習と生物の意思決定とを関連付けた脳研究は,行動選択や報酬,報酬予測に関連した神経活動を,広く発見してきた.しかし,これらの研究は,「状況」を軽視してきた.本研究は,報酬一定条件と報酬変動条件の2つの状況を任意の試行順序で持つ自由選択課題を,ラットで実施し,23個の内側前頭前野と43個の背側線条体の神経細胞で活動を計測した.ラットの行動選択は,(i)報酬一定条件と報酬変動条件で異なる強化学習モデルに適合した,(ii)各報酬条件での行動を独立に学習するモデルより,両報酬条件での経験を干渉的に用いるモデルに,よく適合した.この結果は,ラットの状況依存的な行動戦略と,状況干渉的な行動学習を示唆する.内側前頭前野と背側線条体の神経細胞では,それぞれ,状況と行動をコードする割合が多かった.また,両領野では,状況非依存的に行動・報酬をコードする神経細胞も多かった.この状況非依存的な細胞表現が,状況干渉的なラットの行動学習につながると考える. (II)二光子励起顕微鏡による課題中のマウス神経活動の多数同時イメージング 状況推定脳内メカニズムの解明で,研究員は,古典的条件付け課題中のマウスで,二光子励起顕微鏡での神経活動多数同時計測手法を用いた.同手法は,頭部を固定した行動中のマウスで,多数の細胞の神経活動をカルシウムイメージングできる.カルシウムセンサーとして,GCampを発現したアデノ随伴ウイルスを,神経細胞に感染させた.課題中のマウス神経細胞は,音・水を舐めるリッキング行動・移動運動に相関する活動を持つことを発見した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「複数状況を持つ自由選択課題における前頭前野と線条体の神経活動」の研究を,国内外の学会で発表した.同研究の解析は,学術雑誌に投稿できるまで進んでいる.また,ラットの恐怖条件付けと電気生理を組み合わせた研究を,学術雑誌に投稿した.同研究は,今年度,PlosOneでの掲載が決定した.さらに,二光子励起顕微鏡を用いた課題中のマウス神経活動の多数同時イメージングでは,セットアップが完了し,計測を開始できた.
|
Strategy for Future Research Activity |
「複数状況を持つ自由選択課題における前頭前野と線条体の神経活動」の研究を学術雑誌に投稿する.前前年度に学術雑誌(European Journal of Neuroscience)に投稿した研究に,神経活動のデータを加え,国内外の学会で発表,学術雑誌に投稿する. 二光子励起顕微鏡を用いた研究では,複数のマウスで古典的条件付けを行い,神経活動をイメージングする.具体的には,各マウスで,二次運動野・後頭頂葉のどちらかに,GCampを発現したアデノ随伴ウイルスを注入する.各領野の神経細胞でイメージング・神経活動を解析し,実験対象領野を決定する.今年度後半では,両領野でのイメージングを終える.また,国内学会での発表をめざす.
|