2011 Fiscal Year Annual Research Report
チューブリン・ポリグルタミン酸化修飾による鞭毛運動調節機構の解明
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11J08873
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 智広 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | チューブリン・ポリグルタミン酸化修飾 / 鞭毛・繊毛 / クラミドモナス |
Research Abstract |
研究実績の具体的内容) (1)本研究の第一の目的はチューブリン・ポリグルタミン酸化修飾の鞭毛運動性に対する生理的意義を追求することであった。当該研究では鞭毛運動性を解析するのに最適なモデル生物であるクラミドモナスの変異株tpg1を用いてポリグルタミン酸化修飾が複数種ある軸糸ダイニンの中でも特定の内腕ダイニン、ダイニンeに対して大きな影響を及ぼすことを初めて明らかにした。さらに、本研究ではポリグルタミン酸化修飾が軸糸中でダイニンeと生理的に相互作用することが示唆されているダイニン調節複合体に対しても影響を与える可能性を明らかにした。 (2)本研究ではさらにポリグルタミン酸化修飾に異常を持つ新規のクラミドモナス変異株tpg2を同定、解析した。遺伝学的な解析からtpg2は機能が未知の鞭毛蛋白質p177に変異を持つことがわかった。生化学的な解析によってp177は鞭毛のポリグルタミン酸化を行う修飾酵素TTLL9と複合体を形成し、そのことがTTLL9の鞭毛内局在化に重要であることを明らかにした。 意義・重要性) (1)当研究室の以前の報告によってチューブリン・ポリグルタミン酸化修飾は内腕ダイニンの機能に影響を与えることで鞭毛運動性を調節していることが明らかになっていた。当該研究はその結果をさらに発展させ、この修飾が複数手ある内腕ダイニンのうちで特定の一種類の内腕ダイニンに対して大きな影響を与えることを明らかにした。この内腕ダイニン、ダイニンeは軸糸ダイニン中最も塩基性の等電点を有することが分かっている。従って当該研究の結果は、ダイニンと微小管の相互作用において静電相互作用が鞭毛運動の本質を担っていることを示す。 (2)p177を欠損した鞭毛軸糸ではTTLL9が鞭毛内へと局在できなくなるのでチューブリン・ポリグルタミン酸化修飾が減少する。p177は鞭毛繊毛を持つ生物に高度に保存されている。従って、p177を介したTTLL9の鞭毛内局在化機構は進化的に保存された現象であることが示唆されるので、p177の機能を追求することは鞭毛繊毛のポリグルタミン酸化修飾の機構を理解することにつながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書を記載した当初は、ポリグルタミン酸化修飾が内腕ダイニンのa,c,d,eの全部、あるいはそのいずれかに影響を及ぼすことが明らかになっていた。当該研究ではその結果をさらに発展させ、内腕ダイニンeのみに対してこの修飾が影響を与える、という明確で興味深い結果を得た。さらにこれらの結果を国際学会や論文で発表し好評を得た。これらのことから当該研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では特定の内腕ダイニン、ダイニンeがポリグルタミン酸化修飾に大きな影響を受けることを明らかにした。今後の推進方策はダイニンeが有する特異な性質を解明することである。そのためには、軸糸ダイニンを個別に単離する系を用いて、ダイニンeと他の軸糸ダイニンの性質を比較することが重要である。具体的には、ガラス基板上にダイニンを固着し、その上を、微小管を滑らせるin Vitro gliding assayの系を使ってダイニンeとポリグルタミン酸化微小管の相互作用を調べる予定である。
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