2011 Fiscal Year Annual Research Report
多様な生命機能を司る新規遺伝子fad104に着目した創薬開発に向けての基盤研究
Project/Area Number |
11J08926
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
岸本 圭史 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 脂肪細胞分化 / fad104 / 肺形成 / 骨芽細胞分化 / 肺胞上皮II型細胞 / 骨形成 / BMP / Smad |
Research Abstract |
我々はこれまでに、脂肪細胞分化関連新規遺伝子fad104が胎児由来繊維芽細胞の骨細胞への分化を負に制御すること、さらにfad104欠損マウスは肺形成が阻害され、出生直後に死亡することを明らかとしてきた。本研究では、肺形成および骨芽細胞分化におけるfad104の機能を解明することを目指し検討を進めた。その結果、以下に示す研究成果を得た。 1)電子顕微鏡を用いたfad104欠損マウスの肺形態の観察より、fad104が未成熟な肺胞上皮細胞の肺胞上皮II型細胞への分化に必須の役割を担うことを明らかとした。 2)骨格標本を作製、観察した結果、fad104ホモ欠損マウスは大泉門の早期骨化を伴う頭蓋の異形成を呈することを見出した。加えて、頭蓋由来前駆骨芽細胞を用いた解析より、fad104がBMP/Smadシグナルを負に制御することにより、頭蓋の骨芽細胞分化を阻害することを明らかとした。 これらの研究成果により、fad104が脂肪細胞分化だけでなく、肺胞上皮細胞の分化や頭蓋の骨形成も制御する極めて重要な遺伝子であることが明らかとなった。また、本研究成果はfad104がBMP/Smadシグナルの新規の調節因子として機能することを示しており、これまで不明であったfad104の機能メカニズムの一端を初めて明らかとした。 今後、fad104が機能する分子機構をより詳細に解明することによって、肥満や骨代謝疾患、新生児疾患克服に向けてのfad104に着目した創薬開発の基盤が確立されることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、fad104が肺胞上皮細胞の分化に必須であることを明らかとした、さらに、fad104が骨形成を制御すること、fad104がBMP/Smadシグナルを制御することを見出した。これらの研究結果は、『肺形成や骨形成におけるfad104の機能メカニズムを明らかにする』という本研究の目的達成に大きく前進する成果であり、研究はおおむね順調に進展していると思われる。今後、fad104が如何にBMP/Smadシグナルを調節して上記生命現象を制御するかを明らかにすることにより、研究目的を達成できると考ている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに我々は、新規遺伝子fad104が脂肪細胞分化および肺形成を制御することを報告してきた。本研究課題において、fad104が胞上皮細胞の分化・成熟に必須であること、BMP/Smadシグナルを負に制御し、骨細胞分化を阻害することを明らかとした。しかし、骨細胞分化過程以外においても、fad104がBMP/Smadシグナルを制御するかについては不明である。そこで、肺胞上皮細胞および脂肪細胞分化過程においてもfad104がBMP/Smadシグナルを制御するかについて検討する。さらに、fad104がBMP/Smadシグナルを制御する分子メカニズムについても明らかとする。BMP/Smadシグナルは、Smadのリン酸化、脱リン酸化、分解によって厳密に制御されている。そこで、fad104がこれらの現象に関与するか否かについて検討を行う。加えて、fad104が相互作用する因子を同定し、fad104が相互作用によりどのようにBMP/Smadシグナルを制御するかについて明らかとする。これらの検討により、fad104の担うシグナル伝達機構の全容を解明する。
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