2011 Fiscal Year Annual Research Report
π電子系有機分子の電子移動特性に基づいたナノ集積体の精密配向制御と機能の創製
Project/Area Number |
11J08939
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
高井 淳朗 独立行政法人物質・材料研究機構, 高分子材料ユニット, 特別研究員(PD)
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Keywords | 電子ドナー・アクセプター / π共役系分子 / 酸化還元 / 電子的相互作用 / 電荷移動 / 高分子 / 液晶 |
Research Abstract |
本研究では、ナノスケールの高次集積体における巨視的な物性を分子レベルで変換・制御することを目的とする。分子レベルでの構造や電子状態の変化と、高次構造の物性変換との熱力学的な相関についても解明を目指す。 本年度は、外部刺激によって大きな構造変化を示す機能性分子として"回転ユニットを介して連結したπ共役系分子多量体"の設計・合成を行った。外部刺激として特に"酸化還元"に着目し、二つのπ共役系分子(電子アクセプター)を回転運動が可能な電子ドナーを介して連結した、新規電子ドナー・アクセプター複合体を合成した。化合物は、NMRおよびMALDI/TOF-MSを用いて同定した。 各種分光測定の結果から、中性状態においてπ共役系分子間の相互作用は見られず、π共役系分子が互いに離れた構造をとるものと考えられる。 電子ドナー・アクセプター複合体は、固体中および有機溶媒中において、長波長領域(500-1800nm)に特徴的な電荷移動遷移吸収を示すことがわかった。また、π共役系分子を還元すると、π共役系分子同士が近接し、電子的・静電的な相互作用がはたらくことがわかった。 以上の結果から、新規に設計・合成した新規電子ドナー・アクセプター複合体は、外部刺激(酸化還元)によってπ共役系分子間の相互作用を制御でき、回転ユニット周りで大きな構造変化を示すことがわかった。これらの知見は、分子レベルで制御された高次集積体における巨視的性質の変換・制御を目指す上で、重要な足がかりとなる。現在、すでに本研究で開発した電子ドナー・アクセプター複合体を基本ユニットとする高分子、液晶分子の構築にも取り組んでいる。 得られた成果は、論文投稿準備中である。また、カナダで行われる国際学会でも発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、π電子系有機分子の電子移動特性を利用した、新しいナノ集積体の配向制御と機能化を目指して研究を行った。そこで、電子ドナー・アクセプター部位を有する新規なπ電子系分子二量体を設計・合成した。化合物の電子移動特性および光学特性について詳細に検討した結果、外部刺激(酸化還元)によって大きな構造変化を示ことがわかった。また、合成した分子が、固体と等方液体との間に中間層を示し、配向の制御された集積体を構築していることもわかった。 以上のことから、研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
合成したπ電子系分子二量体は、外部刺激(酸化還元)によってπ共役系分子間の相互作用を制御でき、回転ユニット周りで大きな構造変化を示すことがわかった。今後は、これらの知見を基に、分子レベルで制御された高次集積体における巨視的性質の変換・制御を目指す。 現在すでに、本年度得られた化合物を基本ユニットとする複数の高分子、液晶分子の構築にも取り組んでいる。これらの導電性やモルフォロジーなどを詳細に調べることで、さらなる研究の発展が期待される。
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