2012 Fiscal Year Annual Research Report
π電子系有機分子の電子移動特性に基づいたナノ集積体の精密配向制御と機能の創製
Project/Area Number |
11J08939
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
高井 淳朗 独立行政法人物質・材料研究機構, 高分子材料ユニット, 特別研究員(PD)
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Keywords | π共役系分子 / 酸化還元 / 電子的相互作用 / 分子スイッチ / 電子デバイス |
Research Abstract |
本研究では、外部刺激に応答してダイナミックな構造や電子状態の変化を示す機能性分子を設計・合成し、その高次集積体における物性変換と熱力学的な相関関係の解明を目指す。 昨年度、回転ユニット(フェロセン)を介して直結したπ共役系分子(ナフタレンジイミド)二量体を合成し、外部刺激(酸化還元)に応答してナフタレンジイミド間の電子的・静電的な相互作用が変化することを示唆する結果を得た。本年度は、この分子の酸化還元による大きな構造変化と電子状態について、X線結晶構造解析や各種分光法を用いて、定量的に明らかにした。結晶状態および溶液中の還元状態においては、ナフタレンジイミドが積層した構造をとることがわかった。固体フィルム中において、電子アクセプターであるナフタレンジイミドが積層することにより、非常に安定なn型有機半導体特性を示すことがわかった。さらに、このフェロセンにナフタレンジイミドを直結した新規な基本骨格に様々な置換基を導入することで、巨視的な物性変化が期待される種々の材料設計を試みた。 以上の結果から、フェロセンの回転運動とナフタレンジイミドのπ電子間の相互作用を組み合わせることで、π共役系分子の積層構造を酸化還元によって可逆的かつ定量的に制御することが可能であることがわかった。これらの知見は、他の様々なπ共役系分子にも適用可能であり、有機分子からなるアクチュエーターを指向した材料開発の重要な足がかりとなる。また、π系有機分子の酸化還元特性や積層構造を精密に制御し、新規な有機電子デバイス開発にも取り組んでいる。 これらの研究成果は、現在トップレベルの雑誌に投稿中である。また、カナダで行われた国際会議や国内学会など各種学会でも発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、フェロセンとナフタレンジイミドを直結した新規な電子ドナー・アクセプター分子を基本骨格として、アクチュエーターを指向した機能性分子集積体の創製を目指している。本年度は、外部刺激(酸化還元)による分子の大きな構造変化と電子状態について、X線結晶構造解析や各種分光法を用いて、定量的に明らかにした。さらに、固体フィルム中においてナフタレンジイミドが分子内および分子間で積層することで、非常に安定なn型有機半導体特性を示すことがわかった。上記分子を基本骨格とする様々な新規複合体の合成や、有機電子デバイスへの応用研究も進んでおり、研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は合成した種々の新規複合体の高次集積体構造の同定や、酸化還元だけではなく光や電場などの外部刺激による巨視的な物性の変化・制御についても詳細に解析を行っていく予定である。フェロセンとナフタレンジイミドが直結した構造を基本単位とするポリマーも合成し、その機械的・化学的耐久性についても検討したい。 また、これまでに得られたπ共役系分子の構造制御に関する知見を基に、π系有機分子の電子移動特性やモルフォロジーを精密に制御した有機電子デバイスの作製にも取り組み、真に有用な材料の探索を行う予定である。
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