2011 Fiscal Year Annual Research Report
ハイパワー用圧電セラミックスの非線形応答と損失に関する研究
Project/Area Number |
11J09002
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
萩原 学 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 圧電セラミックス / ハイパワー駆 / 非線形現象 / 損失 / 過渡応答 / ジャンプ現象 / チタン酸ジルコン酸鉛 |
Research Abstract |
ハイパワー駆動下での圧電現象の記述には、非線形性と損失を圧電基本式に導入する必要がある。この際には多くの非線形項と複素定数の間の関係を仮定しないと、基本式を解くことができない。そこで、圧電歪は分極に比例し位相遅れはないという仮定を導入した上で、非線形性と損失を含む形での基本式を導出した。基本式に含まれる材料パラメータの決定方法として、圧電振動子にバースト電圧を印加した際の電流および振動速度の過渡応答波形に着目し、導出した基本式を用いて波形の再現を試みた。その結果、非線形効果によって大きく歪んだ過渡応答波形が理論式により完全に再現され、このフィッティングを用いて非線形パラメータを決定した。この結果により、あらゆる圧電セラミックスについて、一度の測定でその非線形定数を得ることが可能になった。さらに、本理論を用いて圧電振動子の変位が共振点付近で不連続に増大する、いわゆるジャンプ現象の解析を行った。まず、レーザドップラ振動計を用いた温度可変の変位曲線測定系を構築し、マンガン添加量の異なる種々のチタン酸ジルコン酸鉛セラミックス振動子について共振曲線を測定した。基本式と運動方程式から非線形性の影響を含む形で共振曲線の理論式を導出し、実験結果の再現を試みた。マンガン添加量によってジャンプ現象の様相が大きく変化したが、すべての試料について理論式は実験結果をよく再現した。これらの結果より、分域壁(ドメイン壁)の移動に起因する非線形弾性定数がジャンプ現象に支配的に影響していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非線形圧電基本式を実際に解くことの出来る形で導出し、運動方程式と組み合わせて解析解もしくは有意な数値解を得ることが当初の大きな懸案であったが、これまでにすでにそれらを達成しているため、研究が順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の計画通り、任意波形の電圧を印加した際の圧電振動子の応答を記述する理論の構築を目指す。基本的にはこれまでと同様に非線形圧電基本式と運動方程式を用い、解を数値的に計算することで任意波形に対する圧電応答を記述する。これにより、非線形パラメータの決定方法から任意波形への応答予測までの一連の流れを提案できると考えている。
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Research Products
(3 results)