2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規二核ポリオキソメタレートの創製と触媒反応系の開発
Project/Area Number |
11J09006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石本 綾 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | タングステン / 過酸化水素 / 酸化反応 |
Research Abstract |
申請者は二核ペルオキソタングステートに過塩素酸を添加することでその酸化反応活性が約60倍に飛躍的に向上することを見出した.二核ペルオキソタングステートへのプロトンの添加によるこのような反応性の向上はこれまでに報告されていない.タングステンNMRを用いた溶存種の測定結果から,二核ペルオキソタングステートと0.5当量のプロトンとの反応により新規ペルオキソタングステートが生成し,その種が高いエポキシ化活性を有していることが明らかとなった.二核ペルオキソタングステートと硝酸の反応溶液へジエチルエーテルを蒸気拡散させることで新規四核ペルオキソタングステートを得た.単結晶X線構造解析,IR,Raman,元素分析,NMR,量子化学計算を用いてキャラクタリゼーションを行った. 四核ペルオキソタングステートによる過酸化水素を酸化剤とした種々の基質の酸化反応について検討した.四核ペルオキソタングステートによるシクロオクテンのエポキシ化反応速度は種々のペルオキソタングステート触媒よりも一桁以上大きな値であり,四核ペルオキソタングステートが優れた酸化触媒であることを示した.四核ペルオキソタングステートは内部アルケンや末端アルケン,スルフィド,アミン,シランを選択的かつ効率的に酸化することが可能であった.配位子や添加剤を用いないタングステン触媒による過酸化水素を酸化剤とした高効率な酸化触媒はこれまでに報告されておらず,本研究が初めての報告例である.さらに,使用する過酸化水素は基質に対し1-1.5当量と少なく,低環境負荷な触媒反応系の開発に成功した. 本触媒反応系の反応機構を検討した.四核ペルオキソタングステートによるエポキシ化反応速度は触媒と基質の濃度にそれぞれ1次に依存し,過酸化水素の濃度に依存しなかった.これらの結果から触媒と基質との反応が律速段階であり,過酸化水素による触媒の再生は速やかに進行することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ポリオキソメタレートの酸化活性点をモデルとしたペルオキソメタレートの合成の過程で新規四核ペルオキソタングステートの合成に成功した.この化合物が従来のタングステン系触媒と比較して,過酸化水素を酸化剤とした酸化反応に対し非常に高い活性を示すことを見出したため.
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Strategy for Future Research Activity |
新規四核ペルオキソタングステートを触媒とした酸化反応の反応機構を解明する.手法としては酸素NMRを使用した溶存種の観測を予定している.既報触媒との結晶構造や計算構造の差異,分光学的考察から本触媒の高い触媒活性の理由を推定し,それらの考察から新規な高活性触媒の開発を行う.
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