2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規二核ポリオキソメタレートの創製と触媒反応系の開発
Project/Area Number |
11J09006
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石本 綾 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | タングステン / 過酸化水素 / 酸化反応 / 反応機構 |
Research Abstract |
申請者は,四核ペルオキソタングステート触媒(W4)による過酸化水素を用いた酸化反応における触媒の溶存状態と反応機構を明らかとした.3-メチル_1-シクロヘキセンの酸化反応による立体効果の検討の結果,W4の立体効果は他のペルオキソタングステートと同程度であった.ハメットプロットにより,活性酸素種の電気的性質の検討の結果,W4が求電子的な酸素種を有することが明らかとなった. W4の溶存状態への水の影響を170MRを用いて検討した.過酸化水素存在下の170NMRスペクトルでは,W4のシグナル以外に,不明な溶存種(W4')のシグナルが確認された.W4のシグナル強度とW4'のシグナル強度の和はほぼ一定であり,水濃度の増加に伴いW4のシグナルは減少し,W4'のシグナルが増加した.さらに,W4に対するW4'のシグナル強度比は水濃度に1次に比例しており,水濃度を0耐に外挿したとき,その強度比はほぼ0となった.これらの結果から,W4と1分子の水との反応によりW4'が可逆的に生成すると推定した. W4によるエポキシ化反応速度はW4と基質の濃度にそれぞれ1次に依存し,過酸化水素の濃度に依存しなかった.また,水濃度の上昇に伴い反応速度は低下した.過酸化水素存在下でW4とW4'の平衡が存在し,水濃度の上昇に伴いW4'が増加し,W4が減少することから,W4が触媒活性種であり,W4'は触媒不活性種であると推定した.これらの結果から,次の推定反応機構を提唱した.W4と基質との反応が律速段階であり,過酸化水素による触媒の再生は速やかに進行する.W4と水の反応により,不活性なW4'が生成する.さらに,量子化学計算を用いて推定反応機構が妥当であることを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
過酸化水素を用いた酸化反応に高い触媒活性を示す四核ペルオキソタングステート(W4)の合成に成功し,速度論,量子計算,NMRを用いて反応機構を解明した.これらの結果は,当初の研究目的以上の成果であり,更なる高活性酸化触媒の開発に有用な知見を得ることができたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
金属二核構造に不斉配位子を導入することで、金属二核構造を有するポリオキソメタレートへの不斉の導入による不斉ポリオキソメタレートの合成と不斉酸化反応触媒系の開発を行う.具体的には,量子化学計算を用いて不斉ポリオキソメタレートを設計し,安定性を評価する.反応条件を検討し,不斉ポリオキソメタレートの合成を試みる.
|
Research Products
(7 results)