2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09019
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
箱江 史吉 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | ラムダ型五酸化三チタン / 光誘起相転移 / 光記録材料 / 薄膜合成 |
Research Abstract |
申請者の所属する研究室では、五酸化三チタンをナノ微粒子することによって新種の金属酸化物であるラムダ型五酸化三チタン(λ-Ti3O5)見出し、このλ-Ti3O5が室温でベータ型五酸化三チタン(β-Ti3O5)との間を可逆的に光誘起相転移することを報告している。本研究ではλ-Ti305の光記録材料としての有用性を検討することを目的としており、このためにλ-Ti3O5薄膜合成を行っている。採用2年目である平成24年度の研究実施計画は、採用1年目に得たλ-Ti305薄膜のキャラクタリゼーションと、光照射部のキャラクタリゼーションであった。 λ-Ti3O5薄膜のキャラクタリゼーションは、透過型電子顕微鏡(TEM)による結晶子サイズの評価とx線回折による薄膜の配向状態の評価について行った。走査型電子顕微鏡(SEM)像の観察結果から、λ-Ti3O5薄膜は粒径約160mの粒子から成るが、TEM観察の結果から、その粒子1つが単結晶であり、結晶子サイズは約160nmとナノサイズの結晶子から成ることがわかった。また、X線回折による配向状態の評価から薄膜は薄膜の法線方向に配向し、面内方向にはランダムであることがわかった。更に、回折パターンをリートベルト解析することで、薄膜の配向軸と配向度を明らかにした。光照射部のキャラクタリゼーションについては、光照射による試料の飛散をうまく低減させることが出来ず、進展があまり見られなかった。 また、λ-Ti3O5の可逆な光転移について繰り返し耐久性の評価を行った。λ-Ti3O5は532mのナノ秒レーザー光と410nmのCWレーザー光を交互に照射することにより、深青色(λ-Ti3O5)と茶色(β-Ti305)の色変化を示すが、この色変化を高解像度で繰り返し撮影出来るシステムを構築し、取得した画像データをRGB(Red-Green-Blue)処理することによって、光転移の繰り返し耐久性を評価した。 λ-Ti3O5の光記録材料の応用展開を検討する上で、薄膜化と光転移の繰り返し耐久性の評価は必要不可欠であり、本年度の成果は有意義であると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画である薄膜の詳細なキャラクタリゼーションについては達成できたが、光照射部のキャラクタリゼーションはあまり進展が見られなかった。一方で、新たに光相転移の繰り返し耐久性の評価を行うことが出来たため、総合的に考えおおむね順調に進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的であるλ-Ti305の光記録材料への有用性を検討する上で、λ-Ti305の光学特性が非常に重要である。よって今後は、λ-Ti305薄膜を用いて光学特性の評価を行う予定である。そのためには、現在得られている粒径160nm程度の粒子から成るλ-Ti305薄膜では散乱の影響から光学特性の評価には不適当と考えられるため、まず粒径の小さな薄膜を合成することを計画している。
|