2012 Fiscal Year Annual Research Report
局所相関の強いスピン液体と相互作用する遍歴電子系における伝導特性の数値的研究
Project/Area Number |
11J09023
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石塚 大晃 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 磁性 / 強相関系 |
Research Abstract |
本年度は、三角格子(1、2)およびカゴメ格子(3、4)上のイジングスピン近藤格子模型のモンテカルロ法を用いた解析を行った。また、これまでに得られた結果を論文にまとめた。 (1)部分無秩序のSlater機構による安定化:昨年見出した、三角格子上の近藤格子模型における部分無秩序状態に対して、その安定化機構を調べるため、スピン自由度の温度揺らぎの効果を平均場として扱い、部分無秩序状態における電子構造の解析を行った。さらに、モンテカルロ法を用いて電子とスピンの結合が弱い領域における相図の振る舞いを詳細に調べた。それらの結果として、部分無秩序の安定化がSlater機構によるものであることを指摘した。 (2)三角格子フェリ磁性体におけるディラックハーフメタル:上記の部分無秩序状態に隣接する3副格子フェリ磁性状態における電子構造について、厳密対角化に基づくバンド構造の解析と、電子系の低エネルギーハミルトニアンの解析を行った。その結果、この系がグラフェンと同じ低エネルギーハミルトニアンであらわされるディラック電子系であることを確認した。また、フェリ磁性を反映して、このディラック電子は完全スピン偏極していることを確認した。 (3)カゴメ格子上のイジングスピン近藤格子模型を解析し、この系においても部分無秩序状態が生じることを確認した。この結果は、伝導電子による部分無秩序の安定化が三角格子に特有のものではなく、2次元格子系に一般に見られるものである可能性を示唆している。 (4)昨年度、厳密対角化を用いて解析を行っていたカゴメアイス型の近藤格子模型について、モンテカルロ法を用いて有限温度での振る舞いを解析した。その結果、このモデルの磁場中相図に磁化プラトーとしてカゴメアイス型の局所相関が発達するものの、磁気秩序を伴わない絶縁体状態が実現することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度見出した部分無秩序状態の発現機構に関する解析や、他の格子での実現可能性について解析を行った。また、カゴメ格子におけるカゴメアイス絶縁体の伝導特性や有限温度での振る舞いについても調べた。加えて、これらの研究成果の大部分を論文として出版するとともに、残りの成果についても現在論文にまとめている最中である。さらに、ハイゼンベルグスピン系の解析を行うためのコードも完成しつつある。このように、本年度予定していた研究内容については概ね達成されており、本研究課題は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
三角格子およびカゴメ格子上のイジングスピン近藤格子模型の解析は概ね完了し、フラストレート格子上のイジング模型に関する解析は本年度までで大部分が達成できたと考えている。したがって、来年度は当初の予定のどおりハイゼンベルグスピン系についての解析を行っていく予定である。ただし、最近、フラストレート格子のひとつである面心立方格子を有する希土類酸化物が実験的に興味深い伝導特性を示すことが報告されていることから、対象をパイロクロア格子から面心立方格子に移して解析を進める予定である。具体的には、この系における磁場中相図や新奇な磁気秩序の発現可能性、および輸送特性について調べる予定である。また、合わせて、これまでの研究成果を学術論文としてまとめ、出版していくとともに、これらの成果を博士論文として取りまとめる予定である。
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Research Products
(15 results)