2012 Fiscal Year Annual Research Report
折りたたみによりドナー・アクセプターのヘテロ接合を与える多関節高分子半導体の開拓
Project/Area Number |
11J09024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吹野 耕大 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フェロセン / 多関節ポリマー / ナノチューブ / 両親媒性 / 自己集合 |
Research Abstract |
低炭素社会に向けた環境・エネルギー問題への取り組みとして、π共役系有機半導体を用いた有機エレクトロニクスは、有機薄膜太陽電池の開発などとも関連してますます重要になっている。本研究では、「折りたたみ」を利用してドナー(フェロセン部位)とアクセプター(π共役系有機分子部位)のヘテロ接合構造を構築し、高性能な光導電性材料や有機薄膜太陽電池の設計に展開する。昨年度は、両親媒性を有する多関節ポリマーを設計・合成し、その溶液中における折りたたみ挙動について解析を行った。本年度は、これまでの共有結合高分子からさらに発展させ、銀イオンとの複合化による配位高分子の設計・合成を行った。これにより、疎水効果やπスタックに加え、金属間の相互作用も構造形成・機能化に利用することが可能となり、効率的な積層構造の形成や、それに伴う導電性の向上などが期待できる。実際に、配位部位をもつ新規両親媒性モノマーを合成し、これと銀テトラフルオロボレートを2:1の比で混合することにより、鉄と銀という2種類の金属イオンを有する配位高分子を得ることに成功した。さらに、この配位高分子について透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行ったところ、コア直径7.5nmの均一直径を有する超分子ナノチューブ構造が形成されていることが明らかとなった。さらに、このナノチューブ試料に対して紫外可視吸収(UV-Vis)スペクトル測定、原子間力顕微鏡(AFM)観察、x線回折法(XRD)による構造解析を行い、この超分子ナノチューブが巨大環状錯体の1次元集積構造であることを明らかにした。このように、環状金属錯体の積層による中空超分子ポリマーの例はほとんど無く、その外壁のπ共役系に由来する導電特性や、数nmに及ぶ中央の一次元空間の利用に大きな興味が持たれる。また、このナノチューブが外部磁場に応答して配列することが明らかとなり、異方的かつ高度な組織化構造を有する有機薄膜太陽電池素子の構築につながる成果であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究を展開する中で、フェロセンユニットの集積による超分子ナノチューブの構築という、当初の予想を上回る現象を発見することができた。この成果は、高度な集合構造形成に新たな設計指針を与えるという基礎的に重要なものであると同時に、本研究の大きな目標であるドナー・アクセプターのヘテロ接合の構築への展開も大いに期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた超分子ナノチューブの構造をさらに詳細に解析するため、SPring-8の放射光施設(理化学研究所の高田グループとの共同研究)を利用したX線回折(XRD)測定を計画している。縦さらに、マイクロアレイ電極、Time-of-Flight法、Flash photolysis Time-Resolved Microwave Conductivity(FP-TRMC)法(大阪大学の関・佐伯グループとの共同研究)を駆使し、得られたナノチューブ試料のマクロスコピック、ナノスコピックな光導電特性を検討する。
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Research Products
(5 results)