2011 Fiscal Year Annual Research Report
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11J09031
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
犬飼 章恵 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カルバゾール / DNA |
Research Abstract |
本年度は、イミダゾール部位をカチオン化することによって水溶化させたカルバゾール誘導体(Im^+)_2Czを合成した。この(Im^+)_2Czと一般的な二本鎖DNAとして広く用いられるCalf Thymus(ct-)DNAとの相互作用について、吸収、CDスペクトル測定を始めとした各種分光分析により検討を行い、DNAと(Im^+)_2Czとが相互作用することで形成する複合体の構造及び形成メカニズムを明らかにした。以下に具体的な研究実施状況を報告する。 (Im^+)_2CzのTris buffer水溶液にct-DNA水溶液を添加すると、ct-DNAの濃度変化に応答した2段階のスペクトル変化が各種分光分析において観測された。ct-DNA滴定に応じて2つの等吸収点が見出され、段階的に2種の複合体が形成されることが示された。吸収スペクトルの変化から、ct-DNAが低濃度と高濃度の条件下で(Im^+)_2Cz 1分子とct-DNA塩基対とがそれぞれ1:1(Binding State I)及び1:5(Binding State II)の組成比で複合体を構築することが分かった。二段階目の反応における平衡定数を算出することでエネルギー差(ΔG)を見積もったところ、Binding State IとIIとが互いにエネルギー差の小さいフラットなポテンシャルエネルギー曲面に存在することがわかった。このことが、ct-DNAの濃度変化に応答した可逆な複合体切り替えを可能にしていると考察される。さらにこれら複合体形成によって発現する機能について評価するため、それぞれのBinding Stateに対するDNA分解酵素(DNase I)の活性を比較した。その結果、Binding State Iに対してDNase Iはほとんど酵素活性を示さないが(OFF)、一方でBinding State IIに対してはDNAに対する活性とほぼ同等の活性を示した(ON).このことから(Im^+)_2CzがDNAと複合体を形成することで分解酵素の活性を切り替える分子として機能することがわかった。今後は、DNA四重鎖と(Im^+)_2Czとの相互作用について、同様の測定および解析を行うことで明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は最初に水溶性新規分子の合成に取り組みました。実験計画上では親水基を導入することで水溶化を実現する予定でしたが、より簡単かつ高収率で合成できる方法に変更して目的を達成しました。次に、本来の研究目標であるDNA四重鎖の構造制御を行うための予備実験として、二本鎖DNAのモデルとして一般的に使われる天然由来のDNAを用いた検討を行いました。今回合成した水溶性分子とDNAとの相互作用を吸収、CD、蛍光スペクトルなどの各種分光分析により確認したところ、予想通りDNAと有機分子の濃度比に応答した二段階の複合体形成が観測されました。これら複合体の形成について、物理化学の観点からさらに詳細な検討を行い、段階的複合体形成のメカニズムを解明することに成功しました。
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Strategy for Future Research Activity |
二本鎖DNAで確立した実験手法や実験結果を参考にし、新規に合成に成功した水溶性カルバゾール誘導体をDNA四重鎖へと導入することを試みる予定です。さらにDNA四重鎖とカルバゾール誘導体の複合体形成だけでなく、複合体形成が四重鎖に及ぼすDNA四重鎖安定性などの物性変化の評価にも取り組む予定です。
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Research Products
(6 results)