2012 Fiscal Year Annual Research Report
飛行量子ビットを用いた非局所量子もつれ状態の生成と検出
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11J09061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 真太郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 近藤効果 / 量子位相 / 表面弾性波 / 飛行量子ビット |
Research Abstract |
当該年度はまず昨年度に計画を変更して行った2経路干渉計を用いた電子の伝達位相の測定を行った。この電子の伝達位相は様々な量子干渉効果を引き起こす重要な自由度であり、その研究は今後の量子デバイスの開発において重要な意義を持つと考えられる。昨年度は典型的な多体効果である近藤効果が発現している量子ドットにおいて伝達位相の測定を行い、多体の基底状態である近藤一重項状態を反映したπ/2の位相変化を観測することに成功した。当該年度はさらに結果の解析を進めることで、その多体の基底状態が近藤温度と呼ばれるエネルギースケールまで維持されることがわかった。これらの結果は理論計算の結果とも非常に良く一致しており、多体効果をより深く理解していく上で重要な意義を持つと考えられ、現在論文としてまとめている。 また、当該年度は新たに電子数が多い量子ドットにおける伝達位相の振る舞いの研究を行った。この多電子の量子ドットにおける位相の振る舞いは先行研究において、量子ドットの特性を反映しない普遍的な振る舞いを示すことが報告されているが、実験の報告例が少なく、その振る舞いは依然として十分に理解されていない。そこで、我々が実験を行った結果、先行研究とは異なり、量子ドットの特性を反映した位相の振る舞いが観測された。この新たな結果は、ここ十年ほど理解が進んで来なかった多電子領域における電子の伝達位相の振る舞いの解明につながっていくものと考えられる。この結果に関しては、春の日本物理学会で発表を行なっており、また、論文としてまとめるべく現在解析を行なっている。 最後に昨年度の研究課題である『表面弾性波を用いた飛行量子ビットの完全な制御』を実現するための実験に取り組み、第一段階の結果として、結合量子細線を用いて表面弾性波による動くドットのコヒーレントな制御に成功した。この結果は今後、可視度の高い飛行量子ビットの実現につながるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度は昨年度から引き続き、2経路干渉計を用いて量子ドットの電子状態に関係する伝達位相の測定を行ってきた。ドットの近藤効果状態における伝達位相については、理論との正確な対応に成功し、論文化を進めている。また、多電子状態に関して、伝達位相の振る舞いが、これまで報告されていた普遍的な振る舞いとは異なることを観測し、電子状態との因果関係を調べている。また、当初の計画に沿った研究である表面弾性波を用いた飛行量子ビットの実現に関しては、結合量子細線での電子のコヒーレントな制御に成功し、今後の進展が期待できる状況であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針としては、初年度より引き続き行ってきた伝達位相の測定によって、量子ドットの電子状態に関係する研究を継続しつつ、当初の計画である表面弾性波を用いた飛行量子ビットの実現を目指す方針である。特に表面弾性波を用いた飛行量子ビットの実現に関しては、当該年度の研究によっておおむねのところは達成されているため、その次の段階である非局所な量子もつれ状態の生成と検出まで目指して実験を行っていく予定である。
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