2011 Fiscal Year Annual Research Report
化学反応を伴う都市大気汚染現象の構造解明及び予測手法の開発に関する研究
Project/Area Number |
11J09095
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊本 英紀 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 大気汚染 / 乱流 / 化学反応 / CFD / 拡散実験 |
Research Abstract |
本研究は、都市居住域内における大気汚染現象の詳細な構造解明と予測を行う数値解析システムの開発を行うことを目的とする。具体的には、計算流体力学(CFD)を応用し、乱流場での化学反応現象をモデル化することで、複雑な形状をもつ都市街区空間内における統合的な大気汚染物質の拡散予測システムを構築する。本年度は、特に下記の2つの課題に取り組んだ。 1.都市キャビティ空間内での反応性/非反応性汚染物質の拡散実験と数値解析 都市空間においては、複雑な乱流場が形成され、その中で大気汚染物質の混合と化学反応が進行する。しかし、このような複雑な乱流拡散場中での反応を対象とした実験はほぼ見当たらず、数値解析モデルの妥当性評価に用いられる実験データが整備されていない。そこで、都市キャビティ空間を模擬した大気汚染物質の拡散実験チャンバーを試作し、乱流場拡散場でのオゾンと一酸化窒素の混合反応過程を計測した。また、同空間内での濃度の乱流変動を捉えるためエチレンガスを用いた非反応性物質の拡散性状の計測も行った。同時に、同じく非反応性物質の拡散を取り扱った数値解析(Large-eddy simulation, LES)を実施し、実験値との比較から乱流変動までを含めた数値解析モデルの予測精度検証を行った。 2.乱流変動を考慮したReynolds平均型反応速度評価モデルの開発 上記あるいは過去の検討では、乱流解析モデルにLESを採用し、都市内での反応と拡散の問題を取り扱った。しかし、LESは比較的高い予測精度が得られる一方、その非常に高い計算負荷が広域な都市域を対象とした大気汚染解析の障害となる。そこで、Reynolds平均型(RANS型)乱流モデルを用いたより低負荷な解析において二分子化学反応速度を適切に評価するため、汚染物質濃度の乱流変動相関を予測するモデルを開発した。モデルを数理的に導出するとともに、数値実験により妥当性および予測精度検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、今年度予定していた課題のうち、乱流拡散場中での反応実験や二分子化学反応モデルを組み込んだCFD解析モデルの開発は順調に進行しているが、汚染物質の光解離反応を考慮するために必要な放射解析モデルとの連成システムの構築はまだ十分に進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは化学反応のうち二分子化学反応を中心にモデル化を行い検討を行なってきた。今後は、光解離反応や壁面への沈着現象など多様な反応現象をモデル化する取り組みを行う。また、実在街区での大気汚染予測のため、広域気象モデルでの大気汚染解析から得た汚染物質流入量を、CFD解析モデルの境界条件とする連成解析システムを構築する。
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