2012 Fiscal Year Annual Research Report
水による炭素-水素結合の酸化を鍵とするエネルギー創製プロセスの構築
Project/Area Number |
11J09130
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 一成 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 光有機電子移動 / ラジカル / 酸化還元 |
Research Abstract |
アミンの窒素原子に隣接する炭素-水素結合の直接的な官能基化は、含窒素化合物をる有用な手法である。アミンの二電子酸化によるイミニウムイオンを鍵中間体とする反応は広く研究されているのに対し、一電子酸化により生成するα-アミノアルキルラジカルは反応活性種として期待できるにもかかわらず、その利用は非常に限られている。α_アミノアルキルラジカルは、熱的な反応条件下では速やかに酸化されイミニウムイオンへと変換されてしまう。一方、光誘起電子移動に基づくアミンの酸化では条件を制御することでα-アミノアルキルラジカルが生成することが知られている。しかし、その利用は紫外光を用いた反応系で数例報告されているのみであり、有機合成的に有用な反応ではなかった。今回、私は遷移金属ポリピリジル錯体を光触媒に用いることで、可視光照射下でのα-アミノアルキルラジカルの生成と、その電子不足アルケンへの付加反応の開発に成功した。この反応系では、極めて広範なアルケンおよびアミンが適用可能であり、高収率で目的生成物が得られた。この反応系では、これまで溶媒量を必要としたアミンをほぼ等量にまで低減することができた。また、紫外光を用いる系では適用できなかった芳香族アミン類が適用可能であった。 また、本反応については、反応機構の解析を行うことで、従来法とは異なる反応機構により進行していることを明らかにすることができた。従来法においては、光が反応の開始段階にのみ関与するラジカル連鎖機構に基づく反応であったが、本反応では光による電子移動を鍵として連続的な酸化還元機構により反応が進行している。この結果は、新たに光電子移動触媒の概念を導入することにより、従来法の問題点を解決することができたことを示している。そのため、本研究は独創的で極めて価値の高いものとなった。 続いて、反応系の更なる拡張に取り組んだ。はじめに、電子不足な二重結合として、アルケンに代えてアゾジカルボン酸エステルを用いることで、炭素-窒素結合生成反応の開発に成功した。この反応の生成物である、N,N-アセタールは種々の求核剤を用いた求核置換反応によって更なる変換反応が可能であることを見出した。そのため、光化学的なC-Hアミノ化と続く求核置換反応を組み合わせる本手法は、アミンの新規官能基化手法として有用なものであるといえる。一方、アミンのC-H結合の官能基化だけでなく、C-Si結合の官能基化反応の開発も行った。アミンのα位にSi原子を導入したα-シリルアミンにおいても、光誘起電子移動条件下、C-Si結合の開裂に基づくα-アミノアルキルラジカルが生成し、α,β-不飽和カルボニル化合物への付加反応が進行した。この反応では、種々の変換反応が知られる有機合成上有用な中間体としてシリルエノールエーテルが得られた。今回開発した手法はいずれも、電子材料、医薬品として重要な含窒素化合物を合成する有用な手法であるといえる。
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Research Products
(11 results)