2011 Fiscal Year Annual Research Report
半導体2重量子ドット中の電子スピンを用いた量子ビットの高性能化と量子計算の実現
Project/Area Number |
11J09133
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
米田 淳 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 半導体量子ドット / 電子スピン / 固体量子情報素子 / ESR |
Research Abstract |
本研究の最終目標は、半導体量子ドット中の電子スピンを量子ビットとして用いた量子計算を実現することである。そのための技術的課題の克服や物理的検証を目指して研究を進めてきており、今年度の研究は概ね計画に沿って実行された。 研究は主に、二重量子ドットにおいて単一電子スピン共鳴実験を行うことによって進められた。測定には、高周波同軸線を備えた希釈冷凍機を用いた。試料には従来から用いられているガリウム砒素系横型二重量子ドットを採用したが、測定に先立って量子ドットの磁場特性を高めるためにデバイス構造に改良を施した。特に、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校のグループとの共同研究によって、基板表面近傍にありながらノイズ特性の良好な量子ドットデバイスの作製が実現した。 希釈冷凍機温度において量子ドットデバイスを調整することでドット中の単一電子スピンに対する電子スピン共鳴(ESR)スペクトルを得ることに成功した。近接したドット間において電子スピンの感じている磁場の差として、従来のガリウム砒素系横型量子ドットで報告されていた値に対し約1桁大きい値を観測した。この磁場は高速操作時にスピン操作の独立性を担保するのに必要な磁場特性である。この値が大きいことから、用いた微小磁石の設計の有効性と、今回のデバイス構造の優位性が確認された。またESRスペクトル幅のESR駆動強度依存性を測定し、スピン回転速度が高速化されていることを示唆するデータを得た。 この大きな磁場特性を利用することで、従来用いられてきた方法とは異なるスピン操作法が可能になると我々は考えた。そこで、この方法でスピン操作を行うために必要な条件を明らかにし、実際にデバイスでそれらの条件が満たされているかどうかを測定した。結果、得られた磁場特性はこれらを満たしており、従来の方法よりも高速なスピン操作が可能なものに相当することが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
震災の影響によりやむなく実験を中断した影響はあったが、当該年度目標の主幹であるESRの高速化が達成されており、おおむね順調である。量子ゲート操作の実現については時間分解測定において技術上の課題が残っているものの、必要特性が達成されていることが別アプローチにより確認された。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は時間分解測定の実施による量子計算実験と、スピン状態読み出しの高速化について取り組んでいく予定である。前者については、従来の測定系での技術的課題である、特定周波数帯での透過率増大を解決した測定系での実験をすでに開始している。後者については新技術の導入が必要となるが、すでに基礎技術の習得をおおむね終えており、今後は測定装置の実装を行うことを予定している。
|