2011 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエの神経回路の細胞系譜による網羅的同定と脳神経ネットワークの解析
Project/Area Number |
11J09141
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 正芳 東京大学, 総合文化研究所, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | プロジェクトーム / 神経ネットワーク / ショウジョウバエ / 神経幹細胞クローン |
Research Abstract |
神経ネットワークの機能を理解するためには、神経ネットワークの網羅的な投射状態(プロジェクトーム)を知る必要がある。プロジェクトームを明らかにすることで、神経ネットワークの機能と回路構造の関係についての理解が飛躍的に進むと期待される。また、コネクトームは行動実験や電気生理学的実験、コンピューターシミュレーションなど神経科学の広い領域で利用可能な有用なデータベースとなる。ショウジョウバエの脳には片半球あたり約100個の神経幹細胞があり、ひとつの神経幹細胞に由来する子孫神経細胞集団を神経幹細胞クローンと呼ぶ。これまでの研究で神経幹細胞クローンはそれぞれが特異的な神経回路を構築することが分かっているので、約100種類ある神経幹細胞クローンを全て同定することで、脳の全神経回路を同定することができる。本研究は一部の脳領域の神経回路のみを詳しく解析していたこれまでの研究とは異なり、ショウジョウバエの脳にある約100種類の神経幹細胞クローンの投射パターンとシナプスの分布を全て同定して、ショウジョウバエ脳のプロジェクトームを明らかにするという、これまでに例のない研究である。また、詳細な脳領域の地図に基づいて神経幹細胞クローンの投射パターンとシナプスの分布を記号化し、有向グラフデータに表すことで、脳の全神経回路を対象にした情報科学的な神経ネットワークの解析ができる点で、独創的な研究である。ショウジョウバエはマウスに比べて脳の神経細胞数こそ少ないが、行動実験はマウスとほぼ同じレベルの実験が可能である。また、視覚系や嗅覚系、聴覚系の研究では、ショウジョウバエ脳と哺乳類脳の間で神経回路の構造に高い類似性が示されている。本研究の完成により、哺乳類の脳内の神経回路にも共通するような普遍的な脳内の神経回路構造が解明され、哺乳類のプロジェクトーム解明に向けて重要な知見を提供できると期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに約3000個のサンプルから、99種類の神経幹細胞クローンを同定した。これは予想される約100種類のクローンのほぼすべてをカバーしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目標である予想される約100種類の神経幹細胞クローンの同定はほぼ終了した。今後は、これらの神経幹細胞クローンと興奮性や抑制性の神経や感覚系低次神経などの既知の神経細胞とを比較し対応させる。また、神経幹細胞クローンの投射領域の重複を調べることで、脳の構造がどのように形作られるかを調べる。他に、神経幹細胞クローンの投射領域を神経束の種類ごとに分類することで、脳の領域間の連絡を調べる。
|
Research Products
(4 results)