2011 Fiscal Year Annual Research Report
AFMを用いたらせん高分子の構造決定法の確立と応用
Project/Area Number |
11J09164
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坂野 元紀 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | らせん高分子 / 原子間力顕微鏡 / フォルダマー / キラリティー |
Research Abstract |
らせん構造を形成する光学活性高分子はキラル識別材料をはじめとする幅広い分野での応用が期待されるため、その合成と構造、機能に関する研究が世界中で活発に行われている。らせん高分子の構造に関する知見は重合機構や機能発現の分子レベルでの理解を深める上で極めて重要であるが、らせん高分子の最も基本的な特性であるらせんの巻き方向を決定可能な一般的手法はこれまでになかった。最近、我々の研究室では、側鎖に長鎖アルキル基を導入した光学活性ポリフェニルアセチレン誘導体が有機溶媒の飽和雰囲気下、固体基板上でらせん構造を保持したまま二次元結晶化することが見出され、原子間力顕微鏡(AFM)による直接観察により、らせん構造、すなわち、らせんの巻き方向や片寄り、ピッチ等の決定が可能となった。 一方、1997年、J.S.Mooreらは、エステル結合により側鎖に両親媒性の置換基を導入したオリゴメタフェニレンエチニレンが非共有結合性の弱い相互作用により分子内で自己組織化し、溶液中で分子鎖がらせん構造に折り畳まれることを報告している。このような分子はフォルダマーと呼ばれ、メタフェニレンエチニレン類似の構造を有するフォルダマー型のらせん高分子が現在までに数多く報告されているが、そのらせんの巻き方向を直接決定した例はない。 本研究では、側鎖にアミド結合を介してアラニン残基を導入したポリメタフェニレンエチニレン誘導体(PmPE)を合成し、固体基板上に二次元結晶化させることで、AFMによるらせん構造の直接観察を試みた。PmPEは有機溶媒中で主鎖の吸収領域に分裂型のコットン効果を発現し、一方向巻きのらせん構造を形成していることが示唆された。また、このポリマーは側鎖のアミド基間の分子内水素結合によりらせん構造が安定化されており、固体中でもらせん構造を保持することが配向フィルムのX線回折測定および二次元結晶のAFM観察から明らかとなった。さらに高分解能AFM観察より、らせんの巻き方向とピッチの直接決定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、AFMを用いたポリメタフェニレンエチニレン誘導体の構造決定に成功し、論文投稿準備中であることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画であるらせん高分子の構造解析に加え、低分子化合物からなるらせん状超分子集合体についてもAFMによる直接観察が可能であることが最近分かってきたため、超分子らせんポリマーについても検討する予定である。
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Research Products
(3 results)