2011 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物の陸上進出における、呼吸器官の進化と外鰓の役割
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11J09181
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
藤村 衡至 東京慈恵会医科大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ポリプテルス / 外鰓 / 発生 / 神経堤細胞 / 上皮 / 神経褶 |
Research Abstract |
本研究では、ポリプテルス(Polypterus senegalus)という熱帯魚を対象とし、その胚を用いて外鰓がどのように形成されるのかについての分子発生学的な実験をおこなうことを根幹としている。計画している実験では定期的に頻度よくそして数多くの受精卵を採卵できることが望ましい。しかし、実際に受入機関で研究を始めたところ,自然産卵では計画通りに産卵せずまた得られる胚の数も本研究にとっては不十分であることがわかった。 そこでまず、性腺刺激ホルモン放出ホルモンが含まれているOvaprimという試薬を皮下注射することによって繁殖行動を誘発させ、ポリプテルスの受精卵を安定的に供給できるよう試みた。現在までに適切なホルモン量と適切な回復期間を検討しながら、8ペアに対して順に、月曜にホルモン注射をおこない火曜から木曜まで採卵するという一連の作業をおこなっていて、定期的に受精卵を採取できるように取り組んでいる。 このようにして得られた胚を使い、ポリプテルスの外鰓がどのように形成されるのかについて調べた。外鰓の原基はStage25には明瞭な膨らみとして咽頭後方の表面上に認められる。そこで、それより以前の神経胚期から尾芽胚期にかけてのStages19-22においてポリプテルス胚のさまざまな位置に生体蛍光染料であるCM-DiIを微量注入することによって細胞系譜を追い、将来外鰓が形成される位置を特定した。神経胚期には、「神経板」領域を取り囲むように「神経褶」が隆起し、その左右が正中で癒合し管状に閉じることにより「神経管」が形成される。この形成の過程で「神経褶」の細胞の一部が脱上皮化し「神経堤細胞」となる。CM-DiIによって頭部神経褶を局所的に標識していったところ、後端の一部から外鰓が形成されることが明らかになった。また、その神経摺の領域の腹側下方の表皮外胚葉を局所的に標識したところ、外鰓の上皮が形成されることも明らかになった。これらのデータに基づいて分子発生学的な実験をおこなう予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画を立案した当初、研究対象であるポリプテルスの受精卵は十分取得できるものと期待していた。しかし、受入機関で研究を始めたところ数回の自然産卵で数十個の胚が使えるのみであり、研究計画の実験には不十分であった。そこで、ホルモン注射をおこない繁殖行動を誘導させることによってポリプテルスの受精卵を安定的に供給できるように改善を試み、その結果徐々に定期的に受精卵を採取できるようになってきている。研究計画通りではないものの、おおむね進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きポリプテルスの受精卵を安定的に供給できるよう改善を試み、本年度得られたデータに基づいてポリプテルスの胚を使った分子発生学的な実験系を構築する。
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Research Products
(4 results)