2012 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物の陸上進出における、呼吸器官の進化と外鰓の役割
Project/Area Number |
11J09181
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
藤村 衡至 東京慈恵会医科大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ポリプテルス / 外鰓 / 発生 / 神経褶 / 表皮外胚葉 / 内胚葉 / 鰓弓骨格 |
Research Abstract |
本研究は、ポリプテルスの胚を用いて外鯉がどのように形成されるかについて調べ、外鰓の形成メカニズムがどのように脊椎動物の鰓弓骨格の進化に影響を与えたかについて考察することを目的としている。昨年度は、ポリプテルスの外鰓形成には「神経褶」の舌骨弓領域とその領域の腹側下方の「表皮外胚葉」の領域が関与することを明らかにした。 本年度は引き続き、以下の3つの実験をおこなった。 1)除去実験:この2つの領域をそれぞれ外科的に除去することによって、外鰓形成への影響さらには咽頭骨格の軟骨形成への影響があるか調べた。「神経褶」を除去した場合外鯛の形成自体には影響が少ないため、神経堤細胞は外鰓形成に材料を供給する受動的な役割しかないものと考えられる。一方、「表皮外胚葉」の領域を除去した場合、処置側の外鰓芽が全く形成されず、また鯉弓骨格に大きく影響が認められた。 2)移植実験:ドナー胚から「表皮外胚葉」の領域を切り取り、レシピエント胚の頭部の「表皮外胚葉」に異所的に移植することによって、外鰓形成への影響を調べた。舌骨弓領域の「表皮外胚葉」に移植した場合のみ余剰の外鰓芽が形成され、その外鰓芽から機能的な外鰓が余剰に形成された。 3)横断面観察:外鰓形成領域の横断面を調べた。Stage20では内胚葉が一様に認められるが、Stage21では内胚葉が外側へと肥厚し膨出し始めて、Stage24になると大きな内胚葉の嚢を形成するようになり外側から外鰓芽として認識されるようになった。そしてStage25ではさらに内胚葉が外鰓芽の中へと伸長していくことが明らかになった。 以上のことから、「表皮外胚葉」の領域からの"外側"のシグナルによって、"内側"の「内胚葉」の構造が肥厚・膨出し、外鰓芽形成が誘導され、その後「神経堤細胞」とともに外鰓が形成されると考えられる。またさらに、その外鯉のための内胚葉の嚢が咽頭嚢の形成に影響を与え、鰓弓骨格の形成にも影響していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画を立案した当初、研究対象であるポリプテルスの受精卵は十分取得できるものと期待していた。しかし、受入機関で研究を始めたところ数回の自然産卵で数十個の胚が使えるのみであり、研究計画の実験には不十分であった。そこで、ホルモン注射をおこない繁殖行動を誘導させることによってボリプテルスの受精卵を安定的に供給できるように改善を試み、その結果徐々に定期的に受精卵を採取できるようになってきている。研究計画通りではないものの、おおむね進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果より明らかになった「表皮外胚葉」の組織片に存在するであろうと考えられる外鰓形成の誘導シグナルを突き止め、ボリプテルスの外鰓形成の分子機構を明らかにし、脊椎動物の鰓弓骨格の進化との関連性を探る予定である。
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