2011 Fiscal Year Annual Research Report
生合成遺伝子の異種発現による抗腫瘍性生物活性物質テトラヒドロイソキノリン類の合成
Project/Area Number |
11J09202
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
猿渡 隆佳 静岡県立大学, 大学院・薬学研究科, DC1
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Keywords | サフラマイシン / ペプチド系抗生物質 / 非リボソーム依存性ペプチド合成酵素 / 酵母 / 生合成 |
Research Abstract |
本研究の目的は、サフラマイシンA(SFM-A)生合成遺伝子群を出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)にて異種発現させることで、安価かつ簡便にテトラヒドロイソキノリン類の大量合成を行うことである。まずテトラヒドロイソキノリン類の生合成遺伝子クラスターを比較することで、サフラマイシン類の生合成に必要である遺伝子を選別した。その結果、sfm生合成遺伝子のうちsfmA,B,C,D,M_1,M_2,M_3,O_2がSFM-Aの合成に必要であると予想し、これら合計8つの生合成遺伝子群を発現させるべく、異なる栄養要求性を利用する4つのプラスミドのコンストラクトを作製した。 SFM-Aは非リボソーム性ペプチド合成酵素により合成されると予想したが、本酵素は異種発現時には不活性なアポ酵素として合成されるため、その活性化を行う必要がある。この反応を触媒するのがホスホパンテテニル基転移酵素であり、S.cerevisiae染色体上にBacillus subtilis由来ホスホパンテテニル基転移酵素をコードする遺伝子を導入することで、サフラマイシン合成宿主を作製した。遺伝子導入は相同組換えにより行い、ホスホパンテテニル基転移酵素の発現はウエスタンブロッティングにて確認した。 サフラマイシン類の骨格形成に必要なチロシン誘導体は非天然型アミノ酸である。そのため、チロシン誘導体の生合成遺伝子群はクローニングしたものの、その供給量が不十分となりサフラマイシン類の生産量が少なくなることも予測できた。そこで、酵母菌体内でのチロシン誘導体供給量が不十分であった際に、その外部供給ができるよう、有機化学的合成により本化合物を合成した。本合成法についてはTorikai, K. et al. Lett. Org. Chem. 2011, 8, 686-689.にて発表した。 今年度の研究成果により、SFM-Aの生合成に必要となる宿主、生合成遺伝子、基質揃えることに成功したと考えられる。今後これらを用い実際にサフラマイシン類の獲得を目指していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的化合物の合成に必要となる遺伝子群、宿主、基質の獲得に成功し、目的化合物の合成に必要な要素をそろえることに成功した。現在これらを用い化合物の生産確認を行っている段階であり、申請時の年次計画に従い、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
まず昨年度に作製したプラスミドを生産宿主に導入し、目的化合物であるSFM-Aの生産を試みる。SFM-Aの生産が確認できない場合や、その量が不十分である際には、基質となるチロシン誘導体を培地に添加し外部供給を行い生産量の向上を試みる。また、当研究室において、よりコピー数の高いプラスミドをS. cerevisiaeに導入することで、化合物生産量が向上する結果を得ているため、プラスミドのコンストラクト改善を行う。これらにより、化合物獲得量が向上することが期待され、SFM-Aをビルディングブロックとして用い、他のテトラヒドロイソキノリン系化合物への変換を行う際に研究を有利に進めることが可能になる。SFM-Aの大量生産に成功した後は、Manzanaresグループの報告(Cuevas,C.et al. Org. Lett. 2009, 2, 2545-2548.)を踏襲した有機化学的合成による構造修飾、さらにはハイブリッド型生合成酵素を用いた酵素化学的な構造修飾も目指す。
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