2012 Fiscal Year Annual Research Report
生合成遺伝子の異種発現による抗腫瘍性生物活性物質テトラヒドロイソキノリン類の合成
Project/Area Number |
11J09202
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
猿渡 隆佳 静岡県立大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | サフラマイシン / ペプチド系抗生物質 / 非リボソーム依存性ペプチド合成酵素 / 酵母 / 生合成 |
Research Abstract |
本研究の目的は、サフラマイシンA(SFM-A)生合成遺伝子群を出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)にて異種発現させることで、安価かつ簡便にテトラヒドロイソキノリン類の大量合成を行うことである。 平成23年度までの研究成果として、申請者はsfm生合成遺伝子のうちsaframycinAの合成に必要であると考えられるsfmA,B,C,D,M_1,M_2,M_3,O_2を出芽酵母へと導入することとした。これら合計8つの生合成遺伝子群を発現させるべく、異なる栄養要求性を利用する4つのプラスミドのコンストラクトを作製した。 平成24年度においては、実際に8つのsfm生合成遺伝子群を導入したS.cerevisiaeを培養し、その生産化合物について解析を行った。コントロールとして遺伝子群を含まないベクターのみを導入したものを用意し、生合成遺伝子を導入したものと比較すると、遺伝子発現誘導後、24時間の時点で、UV254nmの吸収において大きな違いが見られた。sfmABによって合成されることが期待されたmyristoyl-Ala-Glyの分子イオンに相当するm/z値を抽出すると、それに相当する化合物の生産が確認され、合成標品との比較からも本化合物が合成されていることが確認できた。さらに、sfmCにより1分子のチロシン誘導体が縮合し、Pictet-Spengler反応を行った化合物についても、その分子イオンピークを確認した。さらに遺伝子発現誘導後48時間後では、もう1分子のチロシン誘導体が縮合し、2回目のPictet-Spengler反応による環化が行われたと考えられるN-myristoyl-presaframycinに相当する分子イオンピークが得られ、またメチル基の導入および水酸基の導入によりキノン環へと変換されたN-myristoyl-safracinBに相当するMSフラグメントが存在していることも確認できた。 さらに申請者は、本システムにおいて新規化合物を創出するため、新たな遺伝子資源として、平成24年度より糸状菌由来遺伝子の活用も試みている。日本農芸化学会2013年度大会および日本薬学会第133年会にて、これらの成果を併せて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テトラヒドロイソキノリン炭素骨格を生合成する遺伝子発現させることで、それぞれの酵素が生合成すると予測されるペプチド中間体を確認した。それら中間体を高分解能質量分析によって解析した結果、本化合物の生産量は少ないものの、非リボソーム依存性ペプチド合成酵素群によってペプチド骨格が生合成されていることを明らかにした。また、この炭素骨格の生合成を確認することが出来たため、修飾酵素も同様に酵母宿主系で発現し活性を得られると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、得られた形質転換酵母を培養しin vivo合成系において目的化合物の合成を試みている。しかし、現時点ではその生産量は微量である。この原因として、生合成遺伝子の1つであるsfmCの活性が著しく低く、出芽酵母内において還元反応が円滑に進行していないことが考えられる。そこで、本遺伝子が円滑に酵母菌体内で働くことができるよう、sfmC遺伝子配列の最適化や、新たな宿主の開発を行うことを計画している。これらの手段により生産量が改善されない場合には、新規有用化合物を供給する新たな手法を探索する必要があり、糸状菌由来遺伝子を活用することを考えている。対象として、皮膚糸状菌として知られるMicrosporum canisの遺伝子を用いることを計画している。本糸状菌は医療の面から着目されており、ゲノム解読が既に終了している一方で、二次代謝産物の単離例は報告されていないことから、本糸状菌の遺伝子配列を使用することで、新規化合物獲得が期待できる。今後、本糸状菌の形質転換方法の最適化、生産化合物の確認も進める予定である。
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