2011 Fiscal Year Annual Research Report
高精度なMRI診断のための、高速生体内高周波磁場分布計測法の開発
Project/Area Number |
11J09209
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中神 龍太朗 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高周波磁場分布計測 / 9.4テスラMRI装置 / 180°signal minimum法 / MRスペクトロスコピー / ケモ・ブレイン / 5-フルオロウラシル |
Research Abstract |
本研究の目的は、高周波磁場(B^+_1)変動による計測誤差を補正したMRスペクトロスコピー(MRS)計測により疾患の診断精度が上昇するか、動物疾患モデルと9.4テスラMRI装置を用いて検討することである。 3テスラ装置用に独自に開発したB^+_1分布計測法である180°signal minimum法(Nakagami R et al,Proceedings of Int Soc Mag Reson Med,2010)を9.4テスラ装置に適用し、30mm□球形オイルファントムを用いて、従来法(double angle method,Insko EK and Bolinger L,JMR,1993)と同等の均一なB^+_1分布を得ることに成功した。 また、5-フルオロウラシル(5-FU)投与により軽度の認知機能障害を発症するケモ・ブレインラットモデルを作製した。文脈的恐怖条件付け試験の結果、同じ用量の5-FUを投与したラットにおいて、空間認知機能が低下した群としない群とが生じた。これはケモ・ブレイン臨床データと類似する結果であった。5-FU投与ラットのin vivo MRS計測では、海馬のグルタミン・グルタミン酸(Glx)含有量がコントロールと比較して有意に低かった。これまでに抗がん剤投与により海馬の低分子量代謝物が低下したという報告はなく、本研究で得られた結果は重要な知見となりうる。海馬のGlx含有量が減少したメカニズムとして、抗がん剤により神経・グリアのグルタミン・グルタミン酸サイクルに異常が生じた可能性が考えられた。一方、摘出脳の過塩素酸抽出サンプルのin vitro NMR解析では、全脳のタウリンとGlx含有量が有意に減少した。海馬のMRSではタウリン濃度の低下が明らかではなかったが、NMR解析の結果から、海馬以外の領域でタウリン濃度が低下している領域が存在する可能性が高いことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的を達成するためには、9.4テスラ装置で利用可能な高周波磁場分布計測法の開発、最適な疾患モデルの作製が必須である。本年度の成果として、3テスラ装置用に開発した高周波磁場分布計測法を用いることで、9.4テスラ装置で高周波磁場分布計測が可能となり、さらにケモ・ブレイン疾患モデルの作製に成功した。次年度以降、さらに検討が必要ではあるが、ここまでおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、送信磁場分布が不均一となりがちな水ファントムにおいても、180°signal minimum法と従来法で同等の分布が得られるか検討する。同等の分布が得られた後、3次元高周波磁場分布計測を実施する。 疾患モデルでは、平成23年度の結果から、海馬のGlx含有量の低下に関係なく、ケモ・ブレインが発症する可能性が考えられたが、検討例数が少なく、結論がひけないため、次年度も海馬のGlx濃度と認知機能低下の程度との関連を継続して調査する。ケモ・ブレインモデルが、本研究課題の仮説を証明するための疾患モデルとして適さないと判断した場合には、他の疾患モデルを検討する。また、海馬と海馬以外の領域(例えば大脳皮質)の局在MRS計測を実施し、全脳計測で確認されたタウリンの濃度低下がどこに生じたか、調査する。この際には、高周波磁場分布から領域ごとにB^+_1補正を施し、磁場変動により生じる代謝物信号の誤差を補正する必要がある。
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