2012 Fiscal Year Annual Research Report
有機-無機界面の高速プロトン伝導現象を利用した固体高分子形燃料電池の開発
Project/Area Number |
11J09213
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小川 敬也 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 固体高分子形燃料電池 / 有機-無機界面 / プロトン伝導電解質膜 / 量子化学計算 / 水素結合ネットワーク / 無加湿運転 / プロトン伝導機構 / 酸性基高密度化 |
Research Abstract |
本年度は無機層状結晶Zirconium sulphophenyl phosphonate(ZrSPP)と有機電解質ポリマーSulfbnated poly(aryleneether sulfbne)(SPES)の界面を多量含んだ電解質膜(Capping-ZrSPP-SPES)と少量しか含まない膜(Simple-mixing-ZrSPP-SPES)の2種類の膜を実験的に合成した。TEM画像より界面量に大きく違いがあることが示されている。プロトン伝導度は界面が多いほど高く、界面量が高伝導性に重要であることと、Capping-ZrSPP-SPESがZrSPRSPES単体よりも伝導度が高いため界面現象が確認されている。続いて、それぞれ^2H,^<17>Oで膜中のスルホン酸基由来のプロトンと水を置換して固体MAS-NMR測定を-38.8~47.3℃で行った。結果としてSimple-mixing-ZrSPP-SPESでは低温で2Hの移動性が低くなってしまっている。一方Capping-ZrSPP-SPESは低温で^<17>Oのピークが消失することから水が凍っているのに対して、^2Hが移動性を保っていることが示された。すなわち、界面ではプロトンのみが動いていると考えられる。この結果は前年度に量子化学計算で示された界面現象の機構と一致している。また、FrIRで非対称O-S-O振動について着目すると、高波数側へシフトしていた。高波数へシフトするということは弱い水素結合を作ることを示しており、計算によってSO_3H同士が水素結合している場合に互いにプロトンを受容する能力がないために水素結合をつくらず、高波数側へシフトすることが示された。この弱い水素結合は前年度報告したH+ドナー(SO_3H,H_3O^+)同士の長い水素結合であり、界面現象で最も重要な役割を果たしており、通常の律速段階であるReorientation(強い水素結合が阻害する過程)を起こりやすくさせていることがわかった。これより律速段階が解消されることで界面現象による高伝導性が引き起こされていると考えられる。これより界面現象が実験的に示された。この物性を引き出すためには、H^+ドナー同士の水素結合を作るために強制的にスルホン酸基を密集させることが重要と考えられる。例えば、疎水性相互作用などでスルホン酸基を押し出す形で密集させるなども考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度に示したミクロな伝導機構をマクロなデータで証明することに成功した。また、必要な物性として強制的に酸性官能基を近づけるといった材料設計の具体的な提案にまで昇華させることができた。また、前区分で書ききれていないが、ルイス酸によるプロトン伝導性の向上の可能性も示されており、さらなる進展の可能性を持った研究ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
界面現象について、官能基の種類や量などのパラメーターをふることで実験・計算から解析を進めて、界面形成に必要な条件をさらに調べ上げる。具体的には無機粒子をZrSPPからZrP,ZrS,ZrPPに変えて伝導度と物性を調べる。続いて計算でも同様に無機粒子のモデルを入れ替えることでプロトン伝導への影響を解析し、実験との整合性をみる。なお、ZrSはルイス酸であるため、これまで扱ってきた界面現象とは違った現象が起こることが期待される。
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Research Products
(4 results)