2011 Fiscal Year Annual Research Report
難治性神経因性疼痛を担うエピジェネティクス異常とその調節機構の解明
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11J09224
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
内田 仁司 関西医科大学, 医学部, 特別研究員(PD) (30549621)
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Keywords | 神経障害性疼痛 / エピジェネティクス / 脊髄後根神経節 / NRSF/REST / 遺伝子発現 / 細胞内局在 / 可視化 / プロテオーム |
Research Abstract |
本研究課題では、神経損傷に起囚する神経因性疼痛(神経障害性疼痛)の特徴である「痛みの記憶」を遺伝子発現の長期性にもとめ、エピジェネティクスの観点から解明することを目的としている。具体的には、これまでに本研究者が同定した「神経障害性疼痛におけるエピジェネティクス異常を誘発する転写抑制囚子NRSF/REST」に着目し、神経損傷後におけるNRSFの細胞内局在(核移行)と転写抑制の解析を通じて、神経障害性疼痛におけるNRSFの機能調節機構を解明する。 当該年度では、NRSFの細胞内局在を制御する分子マシナリーの解析に着手した。 まず、可視化とプロテオームの解析を行うために、NRSFと蛍光タンパク質の融合タンパク質を発現するプラスミドを作製した。全長塩基配列の確認後、このクローンの機能性については、培養細胞への遺伝子導入による発現解析にて評価し、ウエスタンブロット法では目的タンパク質の検出、共焦点顕微鏡解析では細胞核の局在を観察することができた。Site-dkect-Mutagenesis法を用いて種々のNRSF遺伝子変異体を作製し、培養細胞への遺伝子導入による発現解析を進めており、可視化とプロテオームの解析の準備段階を終えた。一方、転写制御の解析については、これまでの坐骨神経の部分結紮による神経障害性疼痛モデルでは困難であった「損傷神経と非損傷神経を区別した解析を行うために、第5腰部(L5)脊髄神経を結紮後切断するL5-spinal nerve transection(L5-SMT)モデルを作製した。さらに、神経損傷後の脊髄後根神経節におけるNRSFおよびその標的遺伝子の遺伝子発現とエピジェネティクスの解析に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、NRSFの細胞内局在と転写制御機構の解明を目的としており、前者については、NRSFの細胞内局在(核移行)の分子基盤を解明するために、可視化とプロテオームの解析法を確立した。一方、後者については、非損傷神経と損傷神経を区別して解析することができる、神経障害性疼痛モデル(L5-SNTモデル)を作製し、NRSFと標的遺伝子の遺伝子発現とエピジェネティクス解析に着手した。いずれの解析も準備段階を終えており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
NRSFの細胞内局在については、培養細胞ではすでに確立した可視化とプロテオームの解析、動物個体ではプロテオーム解析を用いて、NRSFの核移行の分子マシナリーを同定する。さらに、機能阻害を含めた解析にて、神経障害性疼痛におけるNRSFの核移行の分子マシナリーの機能的関与を解明する。一方、NRSFの転写制御機構については、神経損傷後の脊髄後根神経節を用いて、非損傷神経と損傷神経におけるNRSFと標的遺伝子のエビゲノム異常とその制御機構を解明する。さらに、明らかにした転写制御機構について、種々の制御化合物を用いて、神経障害性疼痛におけるNRSFの転写制御機構の機能的関与を解明する。
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