2011 Fiscal Year Annual Research Report
Periodicグラフの計算代数的解析及びその上での幾何アルゴリズム
Project/Area Number |
11J09267
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
夫 紀恵 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | Periodicグラフ / アルゴリズム / 計算幾何 / Voronoi図 / 計算代数 / トーリックイデアル / パラメトリック整数計画問題 |
Research Abstract |
本研究では計算代数的解析・幾何的解析を通じ,離散的構造であるperiodicグラフ上で,ナノテクノロジなど現実の問題へ応用を持つようなアルゴリズムを構成することを目的としている.本年度の研究目的は(1)periodicグラフ上距離関数計算に必要となるパラメトリック整数計画問題に対する計算代数的アルゴリズムの提案,(2)periodicグラフの平面性・非平面性に対応する代数的条件の解明によってperiodicグラフ上の高速幾何アルゴリズムを構成することの二点であった. 研究目的(1)に関しては,まず計画の通り立教大学渋田敬史氏と共同で代数アルゴリズムの構成を行った.計画当初では理論解析にのみ構成したアルゴリズムを使うことにしていたが,パラメトリック整数計画問題がコンパイラ最適化に応用を持っため計算速度も重要であることと,既存アルゴリズムが非常に低速でしか動作しない場合があることが実験により分かったため,既存アルゴリズムに対抗しうる高速実装をも行う方針に転換した.我々のアルゴリズムで必要となる,大規模なstandard pair decomposition計算は既存の代数パッケージではメモリ不足のため不可能であったが,この問題を組合せアルゴリズムの提案によって解決した.結果,既存のものよりも多くの場合で高速で動作する実装を完成させた. 研究目的(2)に関しては,まず平面periodicグラフを表現する行列がunimodularと呼ばれる代数的条件を満たすことを示した.この結果を用い,さらにある種の組合せ条件を満たす平面グラフ上で高速幾何アルゴリズムを構成した.平面periodicグラフは結晶表面のモデルであるため,この結果はナノテクノロジへの応用に直結するものである.また計画になかったことであるが,東京大学今井浩教授,東京大学橋倉彰宏氏と共同でl1埋め込み可能なperiodicグラフ上での高速幾何アルゴリズムと動作計画アルゴリズムの提案も行った.この結果は上記の代数的な研究でカバーしきれなかった平面periodicグラフや,非平面periodicグラフをカバーするものである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではパラメトリック整数計画問題への計算代数理論の構築を行うことになっていたが,この理論を既存のものよりも高速な実装という実践にまで持って行けたことと,平面periodicグラフ上での幾何アルゴリズムを達成することになっていたが,平面periodicグラフのみならずl1埋め込み可能periodicグラフ上でもこれを達成したこと,またそのことを通じてperiodicグラフの幾何とl1埋め込み可能性に関する深い理論にまで到達したことを理由とする.
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では来年度は量子計算への展開を図る予定であったが,若干の変更をし,本年度で解決できなかった部分の解決を図るとともに,これまで未解決であった理論的問題への新たな展開を図ることとする.具体的には,まず本年度ではすべての平面periodicグラフでは幾何アルゴリズムの構成が出来なかったため,新たな理論を構築し現在妨げとなっている組合せ条件の解析を行う.続いてこれまで主に有限グラフでのみ議論されてきたl1埋め込みアルゴリズムを,periodicグラフで構築することを行う.これは本年度我々が得た結果を有効活用するために必要なものである.
|
Research Products
(3 results)