2011 Fiscal Year Annual Research Report
河川水枯渇時における河床間隙域の生態学的機能と魚類への進化的影響
Project/Area Number |
11J09280
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
川西 亮太 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 河床間隙域 / 避難場所 / 河川水の枯渇 / 魚類 / 撹乱 / 間欠河川 / 局所適応 / ヒナイシドジョウ |
Research Abstract |
本研究は、河川水枯渇時の水生生物の避難場所としての河床間隙域(河床の地下部)の役割に着目し、河川性魚類(ヒナイシドジョウ)を対象に次の2つについて解明することを目的としている。(1)河床間隙域が避難場所として機能するためにカギとなる環境要因の特定と間欠河川での魚類個体群の維持に対する河床間隙域の有効性の検証、(2)河床間隙域を避難場所として利用することによるヒナイシドジョウの形質への進化的影響。 2011年度は、(1)については間欠河川(約2km)に16-19地点の調査地を設け、河川水回復後のヒナイシドジョウと他魚種の生息密度の変化を6月からの4か月間で合計8回調査した。その結果、ヒナイシドジョウだけが河川水の回復直後から一貫して間欠河川内で高い出現率(概ね90%以上)を維持したのに対し、他魚種の出現率や生息密度は河川水の回復直後は極めて低く、時間の経過とともに高くなった。これらのことより、河床間隙域を避難場所として利用できることによって、ヒナイシドジョウは間欠河川で安定した個体群を維持できていることが示唆された。(2)については、間欠河川を含む12地点から形質計測と集団遺伝学的解析を行うための個体のサンプリングを行った。現在までに計測した形態形質を比較した結果、間欠河川の個体群には体長に対して眼径が小さくなる、口ヒゲが長くなるといった傾向が得られている。これらは日の当たらない河床間隙域を頻繁に利用することによる影響ではないかと予想され、今後さらにサンプルを処理し、統計解析により精査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
河川水回復後の個体群動態については十分な知見が得られた。また、形態計測や遺伝子解析のための試料についても、順調にサンプリングを行い、順次解析している段階である。一方、今年度は降雨が多く、河川の枯渇がほとんど生じなかった。そのため、当初計画していた河床間隙域の環境要因の計測についてのみ、今年度行うことができなかった。以上の状況から、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
河床間隙域の環境要因の計測のみ、気象条件の制約により当初の計画からやや遅れているが、2012年度の研究期間中に完遂できるよう調査地の選定や器材の準備を整え、河川の枯渇時期を逃さない万全の体制をとっている。形態計測や遺伝子解析については順調に進行しており、今後余力があれば調査地点を増やしたり、各調査地の環境要因の計測精度を上げたりするような調査を行い、申請内容の全容解明に努める。
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Research Products
(4 results)