Research Abstract |
本年度は,テスト作成に資する知見を得るため,テストの構造的性質が受検者の回答に及ぼす影響に関する検証を行った。具体的には,国語読解テストを用いて,1)一文抜き出し問題,2)読解プロセス,3)空所の表記法,4)回答欄の字数制限について検討した。 方法として,高校入試問題を基に国語テストを作成し,1)一文抜き出し問題(五字抜き出し,一文抜き出し),2)読解プロセス(情報の取り出し,解釈),3)空所の表記法(全て四角,一部カッコ),4)回答欄の字数制限(四十五字~五十五字以内,五十五字以内,字数制限なし)を操作した。これらを中学3年生約500名に実施した。 項目分析の結果,1)は,得点率及び識別力に影響を及ぼさないことがわかった。これは,採点者の負担軽減につながる知見である。2)は,「情報の取り出し」の方が得点率と識別力を高くすることが明らかとなった。3)は,空所の形を一部変えて表記する方が識別力の値を高くすることがわかった。4)は,回答欄では字数制限を設けないことが得点率及び識別力を高くすることが示唆された。 このような知見が得られることで,これまでのような経験にのみ頼った設問作成ではなく,測定目的と実証的に得られたデータとを照らし合わせた設問設計を行うことが可能となる。さらに,これらの結果は,テストの品質を検討することの重要性を示すとともに,設問を含めた構造的性質について実証的に検討することの意義を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,新たな研究に着手し,交付申請書に記載した研究計画を遂行することができた。この研究により,テストの構造的性質における1)一文抜き出し問題,2)読解プロセス,3)空所の表記法,4)回答欄の字数制限,の4つの知見を新たに得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究知見は,構造的性質に関して,一つの題材(問題本文)に基づいた結果である。今回得られた知見を一般化するためには,より多くの題材を用いた検証が必要となる。したがって,今後は様々な題材を対象に検討を進める予定である。
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