Research Abstract |
本年度は,高校入試問題を基に作成した国語テストを用いて,(1)設問の問い方が受検者の能力評価に及ぼす影響とその学年差,(2)自由記述式問題における解答類型の設定の仕方が能力評価に及ぼす影響,の2つに関して検討した。 (1)においては,1)一文抜き出し問題(五字抜き出し,一文抜き出し),2)読解プロセス(情報の取り出し,解釈),3)空所の表記法(全て四角,一部カッコ)を操作した。これらを中学2年生約240名,中学3年生約500名に実施した。項目分析の結果,1)では,学年に関わりなく,得点率及び識別力に影響を及ぼさない可能性が示唆された。2)では,情報の取り出しが求められる場合には,中程度の難易度になり,解釈が求められる場合には,難しい設問になり得るということがわかった。また,3年生においては,後者が受検者の能力を弁別するのに有効な設問になり得ることがわかった。3)では,2年生,3年生ともに得点率に違いは見られなかった。識別力においては,3年生でのみ,空所の形を変えて表記する方が,受検者の能力をより弁別する設問になることが示唆された。 (2)においては,中学3年生を対象に,1)具体例を求める記述式問題,2)あるものの特徴に対し2つの条件を回答に求める記述式問題,の2つに関する検討を行った。これらの設問に対し,「正答」,「その他の回答(誤答)」,「無回答」,の3つの類型と,その類型に「準正答」を加え,段階的に評定基準を設けた解答類型の2種類を用いて,それぞれの解答類型が能力評価にどのような影響を及ぼすかを検討した。項目分析の結果,1)と2)の両設問において,設定前は「その他の回答」に分類されていた回答の多くが,設定後の類型に分類されることにより,受検者がどの程度本文の内容や設問を理解しているかが把握できるようになった。また,2)では,条件ごとに類型を設け,部分点を与えることで,識別力が高くなり,受検者の能力をより適正に反映する解答類型になり得る可能性が示唆された。 以上の結果は,「どのように問うか」という設問の問い方と,受検者の回答を「どのように評価するか」という解答類型を実証的に検討する意義を示している。
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