2012 Fiscal Year Annual Research Report
らせん磁性体におけるスカーミオン格子形成とその量子輸送現象
Project/Area Number |
11J09335
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金澤 直也 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スカーミオン / らせん磁性体 / B20型化合物 / トポロジカルホール効果 / 磁気メモリ |
Research Abstract |
B20型結晶構造を持つ遷移金属元素と14族元素の1対1の化合物においてスカーミオンと呼ばれる渦状の磁気構造が観測された。スカーミオンはその粒子性とトポロジカルなスピン配列のために、強磁性などの既存の単純な磁気構造では現れない特徴的なスピン依存伝導現象を示し、新規スピントロニクスデバイスへの応用が期待されている。本研究では、スカーミオンという位相幾何学的に安定な新奇磁気構造体の発現とそのスピン配列に特徴的な電磁気応答を観測・制御することを目的としている。本年度は、分子線エピタキシー法によるB20型化合物薄膜作製、B20型化合物において最短の磁気周期を持つMnGeにおける小角中性子散乱実験、それらを含むB20型結晶における新奇輸送現象(トポロジカルホール効果)の観測やスカーミオンの電流駆動、Mn_<1-x>Fe_xGeにおけるスカーミオンのキラリティの制御に成功した。B20型MnSi薄膜においては世界で初めてスカーミオン磁気構造の存在を実空間観測によって特定した。これはデバイス化に必要な薄膜化の課題を解決したものである。また、MnGeの中性子散乱実験においては、既存の三角格子スカーミオン状態とは異なる新しい3次元的なスカーミオン状態が実現されている可能性を明らかにした。これによって我々は情報記録の高密度化の指針を示すだけではなくトポロジカルな磁気構造形成の物理をより一層深化させた。さらに、FeGe薄片サンプルへの高電流密度印加によって室温付近におけるスカーミオンの駆動に成功し、Mn^<1-x>Fe_xGeにおいてはMnとFeの組成比を調整することによってスカーミオンの渦の巻く向き(キラリティ》を制御できた。これらはデバイスにおけるスカーミオン制御を大きく前進させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であったB20型化合物薄膜の作製とそれにおける新奇輸送特性(トポロジカルホール効果》の観測、B20型MnGeの磁気構造解明を達成している。特に、薄膜おいてはスカーミオンの実空間観測にも成功し、MnGeにおいては新しい3次元スカーミオン秩序を提唱できた。さらにそれ以外にも、FeGeにおけるスカーミオンの電流駆動やMn_<1-x>Fe_xGeにおけるスカーミオンのキラリティの制御といったデバイス化に向けて重要な電磁気応答を明らかにできている。また、これらの結果は学会発表だけではなく、論文としても出版(3報)・投稿(1報)している。
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Strategy for Future Research Activity |
様々なB20型化合物におけるスカーミオン形成の同定とトポロジカルホール効果や電流駆動といった新奇電磁気応答を観測してきた。今後は今までに培ってきた実験技術・研究成果をもとにスキルミオン形成とその量子輸送現象について系統的な議論を行う。特に、薄膜の組成・形状制御によって実際のデバイス化へ向けての具体的な方策を提唱することや、スカーミオン磁気構造に特有の電磁気応答をさらに発見することを目標とする。例えば光や熱流、圧力に対する応答を新たに測定系を立ち上げ、明らかにしていきたい。
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[Presentation] B20型カイラル結晶MnGeにおけるスカーミオン形成とトポロジカルホール効果2012
Author(s)
金澤直也, Junghwa Kin, Dmytro S. Inosov, JonathainS. White, Nikola Egetenmeyer, Jorge L.Gavilano,石渡晋太郎,小野瀬 佳文,有馬孝尚, Bernhard , Keiler,十倉好紀
Organizer
日本物理学会第68回年次大会
Place of Presentation
広島大学、広島
Year and Date
2012-03-29
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