2011 Fiscal Year Annual Research Report
ムチン遺伝子のエピジェネティクス制御機構及び癌における機能の解明
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11J09349
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
北本 祥 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 膵癌 / ムチン / 早期診断 / エピジェネティクス / MUC17 / DNA methylation / histone modification / microRNA |
Research Abstract |
我々はこれまで、膵胆管系腫瘍において一連のムチン性糖蛋白抗原(主にMUC1,MUC2,MUC4,MUC5AC,MUC16)の発現様式が予後を含む臨床病理学的事項と密接に関連すること、その発現がエピジェネティックな制御をうけていることを明らかしており、現在は、これら知見を利用した難治性膵胆管腫瘍の早期かつ悪性度診断システムの構築を進めている。 このような背景のなか、本研究では、7番染色体上に位置するMUC17遺伝子のエピジェネティクス発現制御機構解明を試みた。※MUC17(正常な膵組織では非発現)は膵癌になると高率に発現すること(J Biol Chem.2006)、そして転移性の膵癌ではさらにMUC17発現が亢進しており、独立した予後不良因子であることが報告されている(Cancer Sci.2010)。 その結果、MUC17は 1)プロモーターの転写開始点近傍のCpG-DNAのメチル化状態と2)同領域に存在するヒストンH3の9番目のリジン残基における化学修飾による制御を受けていることを明らかにした。さらに、3)マイクロRNA(miRNA)に関してもMuc17の転写後制御に関わっている可能性を見いだした(Kitamoto S,et al. Glycobiology 21(2):247-56,2011)。 膵臓がんは癌の中でも極めて悪性度が高く、PET-CT等の最新の機器を用いても、いまだに単期発見どころか、治癒を望める段階での診断は不可能であることが多く、それゆえ、手遅れになる可能性の高い最も難治性の癌である。本研究で同定された機構のなかでも、特にDNAメチル化制御領域は、臨床検体においてもMUC17の発現を反映する可能性が示唆されており、今後、種々の臨床材料を対象に高感度なメチル化解析法を用いて、膵癌おける悪性度診断のバイオマーカーとしての有用性の評価を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初設定した研究課題のうち、膜型ムチン(MUC17等)のエピジェネティクス発現制御機構の解明については、結果の一部は既に論文化しており、現在、臨床診断応用を目指した研究に順調に進むことができているため。さらに、癌微小環境変化によるムチン発現機構や機能解析についても、結果の一部を現在まとめているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、より詳細な膜型ムチンのエピジェネティクス制御機構の解明を進める。並行して、得られた知見を膵胆管腫瘍の悪性度診断に応用するため、臨床検体(組織や体液)を対象にメチル化解析を行い、臨床病理学的事項と照らし合わせ診断マーカーとしての有用性の評価を行う。さらに、低酸素や低グルコースをはじめとする癌微小環境(変化)によるムチン発現の病態形成における機能的意義に関しても研究をすすめる予定である。 研究の進捗に関しては、これまでのところ順調であり、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点はない。
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Research Products
(13 results)