2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09374
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
松井 公佑 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 線光電子分光 / X線吸収分光 / 脱硫触媒 / Ni_2P |
Research Abstract |
水素化脱硫触媒として研究が進むNi_2Pは,従来触媒と比較して高活性であることから,次世代触媒として期待が持たれている.しかし,反応に寄与する触媒表面及び,表層下の構造や電子状態は明らかにされておらず,観察手段も確立されていないのが現状である.そのため,新規触媒の開発の際には膨大なコストと時間を要し,早急な取り組みが必要とされる環境や経済への対策に大きな障壁となっている. 我々は,二次元表示型球面鏡分析機(DIANA)を開発し,SPring-8 BL25SUに設置し,光電子回折法(PED)による半導体・金属表面などの原子構造解析を推し進めてきた.また最近,X線光電子分光(XPS)やX線吸収分光(XAS)などの各種分光測定と組み合わせた"回折分光法"を考案し,サイト選択的な局所電子状態の解析に成功している.本課題ではこれらの手法の適用により,触媒の活性点に着目した状態観察を行い,原子レベルでの触媒活性発現の機構解明を目指す.また,得られた情報を実触媒開発にフィードバックし,"触媒開発における新規戦略"として確立することを目標とする. 本年度はNi_2P単結晶(10-10)面を用いて,触媒反応前の基板情報の収集を行った.内殻のNi3pとP2pを励起して,各励起原子周りの構造情報を持つPEDパターンを測定し,パターン中の原子サイトの帰属を行った.また,PEDとNi-L端XASを組み合わせた測定を行い,XASスペクトル中のサイト情報をパターン変化から観察したところ,スペクトル中に2つの原子サイト情報が含まれていることを見出した.これは,Ni_2P中にNiの原子サイトが2つ存在していることに対応しており,従来,第一原理計算などにより予測的に行われてきた電子状態と原子構造の帰属を,実験的に直接観察することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では水素化脱硫触媒として期待が持たれているNi_2Pの触媒活性の発現機構の解明を目指し,原子分解能・元素選択性を持つ光電子回折法を用いてNi_2P単結晶基板の解析を行っている.今年度の成果により,基板情報のデータの収集ができた.本課題では,外部施設であるSpring-8を利用して研究を行っているが,順調に課題が採択されており,交付申請書に記した通りの成果を上げることに成功している.また,国内外への対外発表も活発に行っており,これは次年度も継続して行っていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
Ni_2Pを実触媒利用する際に問題とされているのが,その触媒寿命の短さである.反応不純物により活性点が潰されてしまうため,触媒表面の改質が提案されている.そこで最近,FeをNi_2P表面に導入することで,触媒特性が向上することが報告された.これまで我々は,Ni_2P基板の情報の蓄積を行ってきたことから,今年度はFe導入による表面物性の変化及び,触媒特性への寄与を調べていきたい.
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Research Products
(4 results)